研究課題/領域番号 |
15K07645
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松岡 延浩 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (80212215)
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研究分担者 |
間野 正美 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (10391210)
木村 玲二 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (80315457)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農業気象・微気象 / 気象災害 / 画像情報処理・画像認識 / 災害リスク評価 / ダスト / 風食 |
研究実績の概要 |
小型で省電力のダスト発生危険度計測システムの開発に着手した。ダストが発生する最低風速(以後,ダスト発生臨界風速と記す)と定点カメラを用いて定期的に撮影された土壌表面の可視画像を機械学習によって関連づけ,土壌表面の可視画像からダスト発生の危険度を推定するシステムである。 今年度と昨年度の観測結果から,ダストセンサ(粉塵計),風速計,土壌水分計,シングルボードコンピュータから構成されたシステムを構築し,ダスト発生臨界風速を推定するアルゴリズムを作成することができた。具体的には,システム自身で計測された風速とダスト濃度からダスト発生臨界風速を推定し,そのときの表面付近の土壌水分量を搭載されたシングルボードコンピュータ内に集積する。ある程度データが集積されるとそれらの関係から設置された場所のそのときの土壌水分量から,ある風速の風が吹いたときダストが発生する確率(以後,危険度と記す)を推定し,ネットワーク上に送信するものである。現在,的中率70%で推定できるようになった。 この研究の中で,表面付近の土壌が乾燥して危険度が高いと判断しても,表面にクラスト等が形成されて小径の土粒子ばかりが集積されている場合,あるいは粒径の大きい土粒子のみになってしまっている場合は,予報が空振りに終わることなどがわかった。土壌表面のテクスチャを可視画像情報に加えて近赤外画像情報を加えることによって予測精度が向上することが予測された。これらの画像情報による危険度推定のアルゴリズムが作れれば予測が向上すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた以下の計画が予定通り進捗した。 ①画像解析のための土壌表面画像の収集と解析が予定通り進んだ。 ②ダスト発生臨界風速推定アルゴリズムがほぼ完成した。 ③インターネットへの接続を当初ZigBeeを用いて行う予定であったが,Wi-fiSDカードの利用で簡略化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度試作したシステムを用いて,ダスト発生臨界風速の値と補正済の地表面画像をなるべく多く収集し(以後,ダストデータセットと記す),それらの関係を比較考察する。まだ,モデルの妥当性が検討されていないので,シングルボードコンピュータへの実装は行わず,処理速度の大きいコンピュータに移し,処理を行う。これらの処理に当たっては,オープンソースのディープラーニングライブラリであるTensorFlow(Google)あるいはCaffe(UC Berkeley)を用いる。ダストデータセットをランダムに3分して,訓練データ,バリデーションデータ,テストデータとして,訓練データで機械学習をさせて,バリデーションデータとで画像情報による危険度の判断の評価を行う。 同時に,フィージビリティスタディを千葉県農林研究センター落花生研究室圃場(千葉県八街市)と生産者圃場(長野県塩尻市)にて実施する。それぞれの地点に試作したシステム(風杯風速計,粉塵計,土壌水分計,シングルボードコンピュータ,定点観測用カメラを設置する。これによって得られたデータ(風速,ダスト濃度,土壌水分)に昨年度,上記八街市で実施した方法で,上記塩尻市の圃場で推定可能かどうか,を検討する。具体的には,その時刻前後の風速とダスト濃度の関係から,ダスト濃度50μg/m3を超えるときの風速を,そのときのダスト発生臨界風速と定義しその値を求める。このアルゴリズムがシングルボードコンピュータに組み込まれているので,その地点のそのときのダスト発生臨界風速をシステムが自動的に決定し記録する。このシステムの妥当性を検討するとともに,画像情報のシステムのアルゴリズムへの組み込みを検討しフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初,可視画像のみを利用してシステムを構築するはずだったが,研究進行に伴い,近赤外画像も使用することによって推定精度が上昇することがわかったため,前倒し支払請求によって研究補助者を用いて解析を進めた。研究補助者の習熟度が高かったので,予定より早期に処理が完了したため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
理由で述べたように近赤外画像の利用を加えたため,当初予定していたストレージデバイスの拡張が必要になったため,次年度使用額の一部にそれを充てる。また,前倒し支払請求時に述べたように,フィージビリティスタディに係る期間を短縮することによって,観測のための交通費,物品費,研究補助の節減を行うこととしたが,システムの完成度を高めるために観測期間を延長するのに充てる。
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