研究実績の概要 |
本研究は、これまで確立されていなかった面源汚濁負荷なども含む河川を流下する流出負荷量の不偏推定法を、定期モニタリングなどの既存の様々なサンプリング法による水質データに基づき計算する手法を開発すること、およびそれを援用した効率的な現地サンプリング手法を確立することにある。 平成28年度は、既存水質データと高頻度連続河川流量データにもとづく流出負荷量の不偏推定法(点推定量・区間推定法)を細部まで検証、確立することができた。本手法名称を従来事後IS法としていたが、IR(Importance re-sampling)法と名付けることとした。本法ではAnderson-Darling(AD)検定量に基づき事後的にPPS(probability proportional to sample size)を事後的に実現すること、およびそのために必要となるAD検定量の閾値を設定することを得た。 また、本法に基づけば、現地河川において一定積算流量ごとに水質サンプリングを実施すれば、様々な水質項目に対して効率よく負荷量推定が可能となることが理論的に示された。これを実証するため、平成27年10月から翌28年12月まで、奈良県五條市の山林流域にて流出高で5mm毎に採水を実施し、TN,DTN,TP,DTP,リン酸態リン、溶存ケイ酸、COD、DCOD、SS、各種イオン(Na, K,Ca,Mg,Cl,硫酸イオン、硝酸イオン)の水質分析を行った。採水は自動採水機により行い、台風時の大出水時にはテレメータを利用し欠測が生じないようサンプリングを実施した。この結果、流量に対して様々に異なる応答特性を有する複数の水質項目に対して、効率的な流出負荷量の不偏推定量を与えることのできるサンプリングが、現実に低コストで実施しうることを立証できた。なお、各々の流出負荷量の推定に関しては、現在検証計算を行っている。
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