本年度では,長期的な無酸素化によって栄養塩溶や硫化物が増大するような劣悪な水環境に対する本技術の有効性を検討するためにLEDの光条件に着目した.まず光スペクトル条件として,赤色・青色波長域の光を含むRB条件とこれに緑色波長域を加えたRGB条件の2条件を設定した.また,光強度条件として,植物プランクトンの光合成に十分な有効光量子量で設定した最適光条件と,これの1/10程度の弱好条件を設定した.本年度では,DO改善効果に対して植物プランクトンの他に沈水植物の貢献が大きいことを考慮して,この発生量の測定が可能なために,ビーカースケールでのLED照射実験を行った. まず,最適光条件のもとでは,光スペクトル条件関わらず,LED照射開始と無酸素化解消にタイムラグが生じ,増加開始後のDOは点灯と消灯に応じた時間周期の定常状態で推移した.また,緑色波長域の光が含まれることで,無酸素化解消のタイミングが早められるとともに,光合成能力の高い沈水植物の出現を促進し,その結果,良好なDO環境を安定的に維持し得る.弱光条件においては,最適光条件に比べて無酸素化解消に時間を長く要するとともに,貧酸素状態の改善に至らなかったものの,栄養塩の溶出や硫化物の発生を抑制できる点で水環境の改善効果を見出せる.また,弱光条件においても,DOの生産速度が高められ,無酸素化解消に係る時間が短縮されるという点でRGB条件の有効性が認められた. 以上から,光合成にとって有効な波長域として知られている赤・青色光に加えて緑色波長域の光がDO改善効果に与える影響が大きく,長期的な無酸素状態により還元性物質が高濃度の場合であっても,さらにLED光源から離れた弱光範囲であっても,高い水環境改善効果を発揮するこが明らかなった.この成果は,本研究で提案するLED照射による水環境改善システムの実現化と高度化に向けた有益な知見ともいえる.
|