研究課題/領域番号 |
15K07651
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
神宮字 寛 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (10299779)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感染症媒介蚊 / デング熱 / 生物的防除方法 / アキアカネ / 天敵 |
研究実績の概要 |
2014年に日本で70年ぶりにデング熱の国内感染が確認された。今後、グローバル化が進み海外からの渡航者が増えた場合、国内での感染者が増加する恐れがある。現在の防除方法は蚊の生息場である水域に薬剤を投入したり、殺虫剤を散布する方法をとっている。これらの防除法の問題点に雨水で薬剤が薄まることや散布場所の長期的な閉鎖が挙げられる。そこで、本研究では感染症媒介蚊幼虫の天敵であるトンボ幼虫を防除に使い、平時からボウフラの発生を抑制するための対策を講じることとした。具体的には、① 蚊の季節的消長の把握、②ヤゴの蚊幼虫捕食能力の推定を研究の目的とした。 ①蚊の季節的消長の把握 蚊の産卵場所となるオビトラップを宮城大学太白キャンパス内に3個×5か所の計15個設置した。オビトラップ設置から6日後に回収、その後オビトラップ内の産卵板に付着した蚊の卵数を計測した。そして、 オビトラップ内の卵・幼虫が4齢幼虫もしくは成虫になるまで飼育し同定した。その結果、蚊の季節的消長として、蚊の卵数のピークは7月中旬であった。蚊の卵数は気温の変化に影響を受ける。しかし、降雨や最高気温が35℃前後になると卵数は減少する。 ②ヤゴの蚊幼虫捕食能力の推定 学内に設置したオビトラップに、アキアカネ幼虫1個体放流区とノシメトンボ幼虫1個体放流区、さらに脱皮阻害剤(アース・スミラブ)溶液区を設けた。トラップ設置から6日後に回収し、容器内の蚊幼虫と蛹の数を計測した。その結果、ヤゴ投入区画では斃死までの間蚊幼虫が発生しなかったことから、全ての蚊幼虫をヤゴが捕食したと推察された。しかし、ヤゴはすべて成虫になる前に斃死した。ノシメトンボ幼虫の平均生息日数は35日、アキアカネ幼虫では41日間を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究目的に設定した、① 蚊の季節的消長の把握と②ヤゴの蚊幼虫捕食能力の推定、についての進捗状況は以下のとおりである。 ①蚊の季節的消長の把握 蚊の産卵場所となるオビトラップを宮城大学太白キャンパス内に設置し、蚊の季節消長を把握することができた。ただし、実験開始が6月からであったため、平成28年度は5月からの開始を目標としている。季節消長については、把握することができた。 ②ヤゴの蚊幼虫捕食能力の推定 申請段階で設定していた捕食能力の推定に関する実験は、完了していない。10齢の捕食能力は推定できたが、8と9齢の実験が完了していない。この点を平成28年度に実行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は捕食能力の推定実験を集中的に行う。アキアカネとノシメトンボの8齢、9齢を用いたボウフラ捕食実験を行う。また、野外でのボウフラ駆除効果を確認するために、人口密集地帯でのアキアカネの卵と幼虫を用いた媒介蚊幼虫(ボウフラ)の駆除効果の検証を行う。 仙台市内の勾当台公園および榴ヶ岡公園のボウフラが発生する水辺にアキアカネ卵もしくは幼虫を放流して、ボウフラの個体数抑制効果を検証する。平成27年の実験結果から、捕食反応タイプが明らかになったので、卵をボウフラが発生する水辺に放流する。放流する卵は、恒温器で保管したものを用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったハイスピードビデオカメラシステムの廉価版が存在し、支出費用を抑えることができたため残額が生じた。また、実験容器の水質分析費用が生じ、その他の項目によって分析を外部委託することになった。以上の理由から、当初の支出計画と異なる費目の予算支出と残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた残額は、仙台市内の公園に設置した実験装置の点検とデータ収集の旅費として使用する。また、当初予定していなかった蚊成虫の採集機器(CDCトラップ)の購入費用とする予定である。
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