研究課題/領域番号 |
15K07652
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
一恩 英二 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (10320912)
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研究分担者 |
藤原 洋一 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10414038)
長野 峻介 石川県立大学, 生物資源環境学部, 助教 (90646978)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | V字ノッチ / 遡上率 / キタノメダカ / ドジョウ / フナ類 / プール式魚道 / 傾斜隔壁 |
研究実績の概要 |
ノッチ角β=30°、60°および隔壁傾斜角α=30°、45°、60°のV字ノッチ全面傾斜隔壁を1枚用いて、3段階の流量(1.70~1.97L/s、5.15~5.37L/s、9.24~9.51L/s)で、計18回の遡上実験を行った。供試魚は水田周辺の魚類であるフナ類、ドジョウ、キタノメダカの3種を各10個体使用した。隔壁上下流の水位差は0.10mとなるように水路下流端の水門で隔壁下流水位を調整し、1回の実験時間を19:00から翌日16:00までの21時間とした。 2015年度に実施したノッチ角β=5°の12回の実験結果と2016年度のノッチ角β=30°、60°の18回の実験結果を合わせて、遡上数を目的変数、隔壁タイプと流量、水温、照度を説明変数とするロジスティック回帰分析を実施した。総当たりでモデルを作成し、AICが最も低いベストモデルでは、いずれの種でも隔壁タイプが選択された。ベストモデルで回帰係数が最も大きかった隔壁は、キタノメダカでα=60°、β=5°の隔壁であり、ドジョウとフナ類ではα=60°、β=30°の隔壁であった。また、そのときの遡上率は、キタノメダカ13%、ドジョウ53%、フナ類100%であった。 ノッチ角β=30°、α=45°の実験(流量:1.8L/s、5.3L/s、9.5L/s)において、水理計測を実施し、越流面の水深は0.7~4.0cm、流速は0.97~1.13m/sであることが明らかになった。魚類の遡上行動の動画を分析して、魚類の対地速度を算定し、対地速度と越流面流速から遡上速度を算定した。フナ類は体長の13~60倍、ドジョウは17~37倍の速度で隔壁越流面を遡上していた。V字ノッチ全面傾斜隔壁の越流面では、一般の魚類の突進速度(体長の10倍程度)以上の速度で遡上したことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画で想定していた実験時間(流量増加実験:2時間、最適流量実験:8時間)より、長時間の21時間(夜間・昼間)の遡上実験を実施して、万全を期している。また、V字ノッチ隔壁のノッチ角は当初計画(5°、10°)から、5°、30°、60°の3タイプに変更して実験を実施している。このため、当初平成28年度に実施予定であった部分傾斜隔壁の実験は、平成29年度に実施する予定としている。平成29年度は、この部分傾斜隔壁の遡上実験と部分傾斜隔壁を4枚用いた魚道の遡上実験を同時に実施する予定であり、実質的な遅れは生じない予定である。これまでのV字ノッチ全面傾斜隔壁の遡上実験から、隔壁傾斜角は60°、ノッチ角は5~30°が、キタノメダカ、ドジョウ、フナ類にとって遡上率に寄与することが明らかになり、着実に成果が得られている。また、隔壁越流面の水理特性や魚類の遡上速度・経路についてのデータも当初計画どおり、蓄積されてきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までの結果に基づき、平成29年度はすべての魚種に対応できる曲線V字ノッチを天端に備えた全面傾斜隔壁と部分傾斜隔壁の遡上実験を実施する。部分傾斜隔壁については、潜孔を設置した隔壁の遡上実験も行い、潜孔の有無が遡上率に与える影響についても明らかにする。 隔壁遡上実験に並行して、4枚の部分傾斜隔壁から構成される魚道模型を実験水路に製作して、魚道の遡上実験も実施する。隔壁遡上率と4枚の隔壁から構成される魚道の遡上率を比較して、隔壁遡上率から魚道遡上率を予測するモデル式を提案する。 また、平成28年度までの研究成果については、「V字ノッチ全面傾斜隔壁の隔壁傾斜角とノッチ角が魚類の遡上率に与える影響(仮題)」と「V字ノッチ全面傾斜隔壁における越流面の水理特性と魚類の遡上行動について(仮題)」と題して、学会発表と論文投稿を目指す。
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