本課題では,沿岸部に設置された地下ダムを対象として、パイプフローの発生に伴う残留塩水塊の短期的な挙動を把握するために,複数の指標による観測方法を提案して現地に適用し,塩水塊のモニタリング技術を体系化することを目標とした. 沖縄県糸満市の米須地下ダムを調査対象とした。現地調査によって地下ダム貯留域の地下水位と電気伝導度の分布を明らかにするとともに、自記計を設置して推移と電気伝導度の変化を観測し、残留塩水塊の現況を把握した。その結果、地下ダム貯留域には塩水塊が残存しているが、地下ダム建設直後からの10年間の間にその分布は拡大していないことが明らかになった。また、自記観測の結果から、洞窟を通過する早い地下水流れ(パイプフロー)によって塩水塊が止水壁に沿って押し上げられている可能性が示唆された。 また、地下水中の溶存酸素濃度や六フッ化硫黄濃度などの指標性を検討するために、米須地下ダム貯留域だけでなく、島嶼部の炭酸塩岩帯水層を対象として実施した現地調査の結果をとりまとめた。米須地下ダムでは、塩淡境界付近で溶存酸素濃度が上昇する地点が存在した。同様の現象は、沖縄県多良間島の淡水レンズ地下水の塩淡境界付近でもみられた。一般的に帯水層中では溶存酸素は消費される一方であることから、塩淡境界付近の溶存酸素濃度が上昇している地下水は、比較的最近に涵養された地下水である可能性が考えられた。また、多良間島やマーシャル諸島共和国マジュロ環礁において、地下水中の六フッ化硫黄濃度を測定し、地下水の涵養年代を推定して淡水レンズ中の地下水の流動状況を検討した。これらの水質項目は地下水の流動時間に関するトレーサとなることから、これらの水質項目が地下ダム貯留域についても塩水塊の滞留時間や電気伝導度の変化の要因の検討に役立てられることが期待される。
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