研究実績の概要 |
比布町の水田において微気象観測を行い、既に実施した岩見沢、羊ケ丘における観測データと合わせて水温のモデルによる推定値を検証した。モデル(Maruyama, 2010)は西日本を対象として構築されているため北海道品種について圃場調査を行い、発育、葉面積推定サブモデルのパラメーターを変更した。その結果、岩見沢(2014年、2015年)、札幌(2015年)、比布(2016年)の各地点での日平均水温推定値の実測値とのRMSEが0.87, 1.08, 0.83, 0.94℃となった。推定値には設定水深はほとんど影響せず、また、地表面上2.5cm, 5cmでの水温観測からも、測定高度は日平均水温に影響しなかった。以上の検証を踏まえ、北海道内の水稲生産地帯の10地点(北斗、蘭越、むかわ、長沼、美唄、深川、上富良野、士別、名寄、羽幌)の1991年~2015年の水温を推定した。冷害年(1992, 1993, 2002, 2003, 2009年)の7月の水温は気温より平均2.1℃高かった。この温度差は気温が低く日射が多い年ほど大で、1993年は2.7℃の水気温差があった。昨年度構築した乾物生産および不稔量モデルを統合し、道内4地点の1993年~2014年の収量を推定したところ、冷害年を含む年次変動を再現することができた。前歴期間の温度も考慮できる不稔率推定モデル(田中、2007)を使用し、入力温度として気温および水温を与えることで、冷害年に深水管理を実施するとどれだけ不稔率を低下できるかを試算した。気温、水温で評価した1993年の不稔率は道内10地点平均で81、41%であった(各地域の普及所で調査した不稔率は平均64%であった)。深水管理による不稔率の低減は、冷害被害の大きな年に顕著で、1993年が40%、2003年が32%、1992年は13%の低減であったと評価できた。
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