研究課題/領域番号 |
15K07668
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安武 大輔 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90516113)
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研究分担者 |
北野 雅治 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30153109)
森 牧人 高知大学, 自然科学系, 准教授 (60325496)
宮内 樹代史 高知大学, 自然科学系, 准教授 (80253342) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光合成抑制 / 転流 / 湿度制御 / CO2施用 / 水分ストレス / ストレス緩和 |
研究実績の概要 |
究初年度では,午前の高湿度環境の創出が午前と午後の作物の水関係に及ぼす影響とそのメカニズムの解明を目的とした課題群に取り組んだ. 先ず,温室に導入した細霧冷房装置を午前中(9~12時)に稼働させることで,葉(材料植物はキュウリ)と空気中との湿度差(葉面飽差)を減少させた.その際に,代表者らが開発した根の養水分吸収速度評価システムを用いて植物の蒸散速度(=吸水速度)の日変化を調べた結果,当該時間帯の蒸散速度を約3割抑制出来たことが示された.しかしながら,高湿度環境の創出処理を終えた午後の蒸散速度には抑制効果を見出すことは出来なかった. 次に,植物の水分状態の指標として,リーフコンダクタンスと葉の水ポテンシャルを計測した.有意差は見られなかったものの,リーフコンダクタンスはとくに午後において減少する傾向が観察された.また,水ポテンシャルについても,高湿度処理によって午後の値が午前よりも上昇し(ただし有意差は無し),植物の水分ストレスが緩和された可能性が示唆された. また,高湿度環境の創出に伴う根の養分吸収への影響を調べたところ,いくつかの必須栄養素(NO3-,K+,Mg2+,Ca2+)について吸水と同程度の減少が見られた(14-16%).さらに,高湿度環境の創出が光合成速度に及ぼす影響を調べるために,植物個体チャンバーを用いた実験を行った結果,高湿度によるリーフコンダクタンスの増加と,それに伴う光合成速度の増加が観察された. 以上のように,温室において午前の高湿度環境を細霧冷房装置を用いて創出し,それが作物の水関係,光合成速度等に及ぼす影響を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように,研究初年度は,午前の高湿度環境の創出が午前と午後の作物の水関係に及ぼす影響とそのメカニズムの解明を目的とした課題群に取り組んだ.一連の取り組みの結果,温室の細霧冷房装置を用いた高湿度環境の創出とそれに伴う蒸散速度の減少,リーフコンダクタンスの増加,水ポテンシャルの増加の効果を観察することができ,当初の計画を概ね達成することが出来た.さらに,当初の計画には含まれていなかった,光合成速度への影響(促進効果)および蒸散抑制に伴う根の養分吸収速度の減少についても明らかにすることが出来た. しかしながら,当初の研究計画の1つである,「午前の作物の水分状態を午後まで維持させること」については期待するデータを得ることが出来なかった.その理由として,代表者が当該年度に所属機関を移動したことが挙げられる(高知大学から九州大学へ移動).この点については次年度以降の課題とする. 以上のように,一部課題については当初の目的を達成することが出来なかったものの,当初の目的の大部分と,さらに当初の目的以上の成果(光合成,根の養分吸収)についても得られたことから,当該年度の進捗状況を「おおむね順調」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べたように,代表者が当該年度(平成27年度)に高知大学から九州大学に異動し,利用できる実験施設に制限があったため,一部の課題においてその目的(午前の作物の水分状態を午後まで維持させること)を達成することが出来なかった.研究2年目にあたる平成28年度は,この点について追加実験を行う.ただし,代表者は異動に伴って実験施設としての温室を利用することが出来ないことから,計画を変更し,実験室における植物個体チャンバーを用いた実験を行う. 次に,植物個体チャンバーにCO2施用機能を追加する.そして,午前の高湿度環境の創出が,午前と午後の光合成速度に及ぼす影響とそのメカニズムの解明を試みる.材料植物としては,代表的な園芸作物であるトマト,キュウリ,ピーマン等を用いる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者は以前の所属機関(高知大学)を異動し,平成27年4月1日に九州大学大学院農学研究院に着任した.この異動に伴って,代表者が使用できる実験施設に制限が生じたため,研究計画にも変更を余儀なくされた. 具体的には,分担者(森牧人氏,宮内樹代史氏)との共同研究を通して,以前の所属機関の施設を使って実験を行ったものの,使用できる期間が限られていた.さらに,異動に伴って実験の遂行も遅れたために,当該年度の研究費を全て使用するには至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
当該研究課題で必須となる二酸化炭素施用装置は,代表者の以前の所属機関の施設には装備されていたが,異動先の九州大学大学院農学研究院の施設には備わっていない.そこで,生じた次年度使用額を使用して,この二酸化炭素施用装置を新たに導入する.
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