研究課題/領域番号 |
15K07669
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
圖師 一文 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50435377)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トマト / ポリフェノール / 抗酸化活性 / 有機質肥料 / 乾燥ストレス |
研究実績の概要 |
本年度は,様々な栽培環境下におけるポリフェノール含量の変化を明らかにするために,乾燥ストレス下(低土壌水分)ならびに様々な有機質肥料を用いて栽培したトマトにおけるポリフェノール含量の変化を明らかにした. 具体的には,乾燥ストレスにおいて,土壌水分量を36%(水充分区)および14%(低水分区)に維持する区を設け,収穫果実のポリフェノール含量を測定した.その結果,低水分区で生体重当たりのポリフェノール含量が水充分区より上昇した.しかしながら,真の生成量を示す乾物重当たりでポリフェノール含量を算出したところ,土壌水分の違いによる含量の差異は認められなかったことから,低水分区におけるポリフェノール含量の上昇は果実内水分含量の低下に伴う濃縮効果であることが示唆された.一方,様々な有機質肥料を用いて栽培したトマトにおいては,真の生成量を示す乾物重当たりでポリフェノール含量の上昇が認められた.この結果から,有機質肥料がトマトのポリフェノール含量を高めることが明らかになった. さらに,ポリフェノール含量の上昇と抗酸化活性(ヒト体内で発生した活性酸素を消去する能力の指標)の関連性を明らかにするために,DPPHラジカル消去能ならびにORACラジカル消去能を測定した.乾燥ストレス実験においてはポリフェノール含量の変化と両抗酸化活性の変化は一致していたが,有機質肥料下で栽培したトマトにおいてはポリフェノール含量の上昇した処理においても抗酸化活性に影響のない処理が存在し,ポリフェノール以外の抗酸化成分の変化が推察された. これらのことから,トマトのポリフェノール含量は乾燥ストレスならびに有機質肥料栽培において高まることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の本年度の計画においては,様々な環境条件として塩ストレス下でトマトを栽培しポリフェノール含量の変化を明らかにするとともに,ポリフェノール含量の変動メカニズムを明らかにするためにin vitro培養果実を用いて様々な環境下で果実を生育させる予定であった.しかしながら,本年度実験担当者が海外留学したために実験を中断しなければならず,これらの実験においては実験サンプルを得たのみでポリフェノール含量の測定まで行うことが出来なかった.また,総ポリフェノール含量だけでなく,個々のポリフェノール組成まで解析する予定であったが,測定機器の不調により完全に実施出来なかった.しかしながら,様々な環境条件として乾燥ストレスならびに有機質肥料栽培下において実験を行いポリフェノール含量の変化とその変動メカニズムの一端が明らかに出来たので,やや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,前年度の実験について反復実験を行い再現性を高めるとともに,前年度実施出来なかった塩ストレスがポリフェノール含量に及ぼす影響ならびに様々な環境下で生育したin vitro培養果実におけるポリフェノール含量の変化を明らかにする.さらに実験で得られたポリフェノールの変動メカニズムが,生成量の増減,分解や活性酸素消去システムの変化に起因するかを明らかにする.具体的には,以下に示すポリフェノール生合成酵素,分解酵素および活性酸素消去システム関連酵素活性の測定を行う. 1)生合成酵素の測定:さまざまな栽培環境で栽培したトマトを用いてポリフェノール生合成に関連する酵素を測定する.具体的には,炭素代謝からフェノール代謝へ移行する際の重要な酵素であるシキミ酸デヒドロゲナーゼ,生合成経路の重要な酵素であるフェニルアラニンアンモニアリアーゼ,ケイ皮酸4-ヒドロキシラーゼおよび4-クマル酸-CoAリガーゼを測定する. 2)分解酵素,抗酸化システムの測定:分解酵素としては,酸化分解を行うポリフェノールオキシダーゼを測定する.また,ポリフェノールは活性酸素消去に利用されることから,酸化ストレス指標(脂質過酸化物)と活性酸素消去システム関連酵素(アスコルビン酸-グルタチオンサイクル)の変化を測定し,ポリフェノールの活性酸素消去に対する役割を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったポリフェノール組成用分析試薬や高速液体クロマトグラフィー測定用消耗品が実験の進捗状況の遅れにより購入する必要がなくなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度行う実験において必要な試薬や測定用消耗品に使用する
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