研究課題/領域番号 |
15K07675
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米澤 千夏 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60404844)
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研究分担者 |
渡邉 学 東京電機大学, 理工学部, 研究員 (10371147)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 合成開口レーダ / フルポーラリメトリックSAR / Lバンド / Xバンド |
研究実績の概要 |
1) 衛星搭載全偏波観測合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar: SAR)による水稲圃場抽出手法の確立 人工衛星搭載LバンドSARであるALOS-2 PALSAR-2の全偏波観測によって水稲の登熟期である2014年9月上旬に取得されたデータを,農地を水稲と大豆その他に区分するために解析した。解析には,固有値解析と四成分分解法を適用した。α角のほか、二回散乱成分の割合,表面散乱成分の割合を用いた抽出結果は、LANDSAT 8 OLIデータの解析によって作成した分布図とそれぞれよく一致していた。 さらに、水稲の出穂期から穂揃期にかけての期間に相当する2016年と2017年の8月上旬に取得されたPALSAR-2データに対して同様な解析をおこなった。その結果、2回散乱成分の割合を用いた場合、水稲の出穂期以降では、観測時期が1か月程度異なっていてもほぼ同じ値が利用できることが示唆された。α角を用いた場合では、9月上旬取得データの解析で得られた閾値をそのまま適用することはできなかったため、新たに二値化によって閾値を決定することによって水稲圃場を抽出した。水稲からの転作作物であり栽培面積が大きい大豆が作付された圃場を、草地やその他の作物が作付された圃場と区分して抽出する可能性についても検討をおこなった。 2) 航空機搭載XバンドSARデータの解析 旧東北大学附属農場(大崎市)を2013年および2014年に観測した航空機搭載Xバンド合成開口レーダで取得されたデータに対してデータ提供元へオルソ補正を依頼し、偏波間の地表高度に起因する位相を補正した。圃場ポリゴンデータを重ね合わせ、作付作物が後方散乱の違いに与える影響について検討した。圃場ポリゴンデータは高分解能光学センサ画像をもとに編集しなおした。その結果、草地更新の状態によって後方散乱の状態がかわることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
衛星搭載LバンドSARの解析によって、平野部の水稲圃場の抽出手法は確立することができた。本手法は、農林水産省で実施されている農作物の作付状況把握手法に関する検討会等で紹介している。国内における実運用において、本研究の結果明らかになった有効なパラメータ等が反映される見通しである。ただし大豆圃場については、一時期の衛星搭載LバンドSARの解析のみでは完全に抽出することは困難とする結果を得ている。 航空機搭載XバンドSARの解析においては、オルソ補正処理前後のデータで位相の分布が異なっているため、正確な解析結果を得るために原因を調べ再処理を依頼することを検討している。 なお、水稲の生育が異なる時期に取得された航空機搭載LバンドSARによる観測データを10シーン入手しているが、それぞれのデータ容量が大きくシーン数も多いことから十分な解析ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
〇Xバンド航空機搭載SARデータの解析 大豆およびその他作物の作付圃場の判別のために、航空機搭載XバンドSARデータの解析によって、作付作物をさらに判別する可能性を検討する。具体的には、2013年および2014年8月に宮城県大崎市に位置する旧東北大附属農場を観測したデータの解析を行う。これまでに有効性を示している三成分もしくは四成分分解法および固有値解析を解析手法として適用する。オルソ補正前後での位相分布のずれが改善されない場合は、補正前のデータに対して、標高データなしでの地図への重ね合わせを行う等の対策を考える。対象地域では、水稲、トウモロコシ、ブルーベリー、牧草、蔬菜等の作付がおこなわれており、これらの圃場単位での判別可能性について評価する。異なる二方向からの観測データを入手していることから、解析結果の観測方向への依存性についても評価する。 〇航空機搭載LバンドSARによる時系列データの解析 仙台市若林区を水稲の生育時期である6月、8月、9月に取得した航空機搭載LバンドSARによる観測画像の解析をおこなう。水稲に注目し、生育段階に伴う散乱成分の割合の変化を明らかにする。また、単一時期のデータ解析のみでは困難である大豆圃場についても複数時期の観測データを用いることによる抽出可能性について検討する。XバンドSARの解析結果と比較し、観測周波数帯の違いによる散乱メカニズムの解明をおこなう。 〇Lバンド衛星搭載SARによる作付作物の判別手法の向上 水稲の栽培方法として、乾田直播の導入が進みつつある。これまでに開発した手法の乾田直播栽培への適用可能性についての検討をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)旅費として国際学会での成果発表(IGARSS2017 アメリカ合衆国・フォートワース)への予算を予定していたが、学内からの助成を受けることができた。GISソフトウェアのモジュールアップデートについては別予算をあてた。データ整理のために謝金の支払いを予定していたが、作業が発生しなかった。 (使用計画)物品費として、大量データ解析用のカスタマイズPCに20万円、データ保存媒体ほか消耗品に5万円、GISソフトウェアのアップデートのために10万円。旅費として国際学会での成果発表(IGARSS2018、バレンシア)のために40万円、国内学会での成果発表のために10万円、現地調査に5万円。謝金としてデータ整理のために12万円。その他として学会参加費(海外1回、国内2回)に10万円、論文投稿料として8万円、英文校閲に5万円を予定する。
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