研究課題/領域番号 |
15K07677
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡安 崇史 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70346831)
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研究分担者 |
井上 英二 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00184739)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農業情報 / 圃場環境モニタリング / 植物体画像計測 / 特徴量抽出 / マルチコプタ / RGB・深度画像 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
本研究では,圃場での長期間・連続的に計測・蓄積される気象環境情報,植物体の画像特徴量等の時系列空間情報を用いて,圃場環境の変化や植物体の生育および形質発現をリアルタイムに演算・抽出可能な技術の開発を行うことにより,農業生産の最適化やフェノミクス研究の発展に寄与することを目的としている. 本年度は,複数の圃場において自ら開発したモニタリング装置を設置し,圃場内の温湿度,日射量,地温,CO2(農用ハウス内のみ)等の気象環境情報の計測を行った.その中で,計測の無線化と省電力化を実現するため,省電力マイコンを用いたモニタリング装置の開発を行い,圃場における実証実験において長期間・安定的に動作することを示した.特異スペクトル分解に基づく変化点分析法に基づくサーバ向けアプリケーションの開発により,気象環境情報の変化点をリアルタイム抽出できることを示した. 一方,植物体の外観特徴量の把握や生育状態の評価を行うために,マルチコプタに搭載したカメラ(RGB画像,熱画像)やKinectセンサ(RGB画像,深度画像)を用いた画像の撮影を行った.実験では,マルチコプタに搭載したカメラを用いて水稲圃場の画像撮影を行った.撮影したRGB画像からオルソモザイク合成画像を生成すると同時に,ポイントクラウド三次元マップの作成を行った.オルソモザイク合成画像に対して,色相値および面積フィルタを用いた画像解析を行うことにより,水稲圃場における葉色分布や欠株数量の推定を行なったものの,これらの画像から十分な精度で草高を評価することはできなかった.熱画像に関しては温度ムラの相対評価は可能であったが,温度校正が必要であることがわかった.また,Kinectセンサを用いて栽培中のイチゴの画像撮影を行った.撮影した画像に対して色相値,深度等を用いた画像処理を適用することで,葉の形状,大きさ,向き等の特徴量を定量的に抽出できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
圃場環境計測に関しては当初予定以上に研究が進んでいる.特に,モニタリング装置の無線化と省電力化が実現できたことにより,モニタリング装置の設置や保守管理の時間を大幅に短縮することができた. 一方,画像処理に関しては,マルチコプタならびにKinectセンサで撮影した画像に対する画像処理手法の選定と画像の解析方法に関してはほぼ予定通り進んでいるが,これらに時間を要したため,当初予定していたGPUを用いた画像特徴量抽出を検討するところまでは進めることができなかった.この点は次年度に行うこととした.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に行なった圃場環境モニタリングならびに植物体の画像撮影を継続して行う.また,前年度実施できなかったGPUを用いた高速画像特徴量抽出の方法を確立する.具体的には,変化点スコアの計算方法の見直しによる解析精度の向上,リカレンスプロット・定量解析法による時系列情報の可視化等を検討する.加えて,ハイパースペクトル分光画像を用いた葉色の診断,深度画像を用いた葉面情報の抽出,サポートベクターマシンに基づく対象物(花,果実等)の検出,オプティカルフローによる画像間点郡情報追跡に基づく植物体生育量の可視化等の高速画像処理・解析が可能なリアルタイム特徴量抽出システムの開発を行う. 前年度より連続的収集される圃場内気象環境および植物体画像等に対する特徴量抽出を開発したシステムを用いて行うことにより,同システムの計算速度,精度等を総合的に評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度と次年度で行う研究内容を一部変更したため,初年度で行うはずであった植物体特徴量画像の高精度計測手法およびGPUを用いたGPUを用いた画像特徴量抽出システムの開発は次年度において実施することとした.これらの開発に必要な経費として,上記金額を次年度へ繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度実施を見送った植物体特徴量画像の高精度計測手法の開発(236,369円)およびGPUを用いた画像特徴量抽出システムの開発(100,000円)を本年度4~7月期で行う計画としている.
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