研究課題
本研究では,農業生産の最適化,フェノミクス研究への展開を視野に,圃場において長期間・連続的に収集・蓄積される気象環境,植物体画像等の時系列空間情報から圃場環境の変化や植物体の形質発現や生育をリアルタイムに演算・抽出可能な技術の開発を行うことを目的としている.本年度は,2.4GHz帯の省電力無線ネットワーク,乾電池および太陽光給電の採用により圃場環境情報を連続計測可能なノードを試作した.本装置はデータ集約・送信装置,温湿度センサ(乾電池駆動),照度センサ(太陽電池駆動),CO2センサ(施設園芸用)から構成される.計測された情報は,5分間隔でデータ集約・送信装置に無線伝送され,3G回線を介してクラウド上のサーバに転送・保存される.計測情報はPCやスマートフォンなどでいつでも確認できるようにした.本装置により,圃場環境の変化を詳しく把握できることを示した.他方,前年度に引き続きToF(Time of Flight)方式の廉価なRGB-Dセンサを用いた植物体の生育特徴量計測システムの開発を行った.本年度は形状特徴量が既知の物体と試験栽培したコマツナの形状特徴量を計測することにより,計測精度の評価を行った.形状特徴量が既知の物体に対する精度評価試験においては,対象物体の面積および高さを十分な精度で計測できることを示した.一方,コマツナを用いた計測では,面積および草高の計測はある程度可能であったものの,草高については植物体の姿勢によって計測位置が時々刻々変化するため,草高の減少などが発生する場合もあることが確認された.また,植物体表面での赤外線の反射特性からToF方式では計測誤差が大きくなる可能性があることがわかった.
2: おおむね順調に進展している
圃場環境の計測ならびに植物体の画像特徴量の抽出に関しては概ね良好な成果を得ている.画像処理に関しては,収集した画像情報をより高速かつ高精度に処理することが可能な方法について検討を行う必要がある.
前年度までに開発してきたシステムの営農利用に関して総合的な検討を行う.気象環境情報に対しては,急激な気象環境の変化,農作業の実施や環境制御機器の稼働に伴う環境や植物体の変化の自動通知,自動ラベリング(特徴的な気象環境の変化を自動記録)等の機能への応用を試みる.また,画像情報の利用に関しては,植物体の生育状態の自動モニタリング,植物体の遺伝子の違いや生育環境の変化に対応した形質発現の差異を追跡するためのフェノタイピング研究への応用に関しての検討を行う.画像処理の高速化・高精度化についても継続して研究を行う.以上の成果により,本研究を取りまとめる予定である.
本年度は圃場環境モニタリング装置の開発を優先したため,画像処理の高速化に関する研究を次年度に行うこととした.そのための研究費として240,865円の繰越を行うこととした.
画像処理の高速化・高精度化のための研究費として240,865円を使用する予定である.
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農業情報研究
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