研究課題
本研究は,農業生産システムの高度化,植物フェノミクス研究への発展を視野に,圃場や園芸ハウスにおいて長期間・連続的に収集・蓄積される気象環境,植物体生育画像等の時系列空間情報から圃場・ハウスの環境変化や植物体の形質発現や生育をリアルタイムに演算・抽出可能な技術の開発を行うことを目的としている.本年度は,920MHz帯域を用いた気象計測装置,気象環境情報や植物体生育状態の空間分布収集のための移動式計測装置および発芽した植物の診断プログラムの開発を行った.まず,畑地など屋外での使用を前提に,920MHz帯域省電力無線通信モジュールを用いた気象環境計測装置を開発した.本装置の送信距離は,建物や樹木等による電波の減衰は認められたものの,見通しで2 km以上の送信が可能であった.次に,市販のカード型マイコン,温湿度,日射量,CO2濃度等を計測する各種センサ,植物の生育状態を計測するカメラ,サーボモータから構成される移動式計測装置を開発した.本体フレームは,3D CADで設計したものを3Dプリンタを用いて直接造形した.本計測装置は,市販の簡易レールを用いて走行できる仕様で,センサやカメラを用いて気象環境情報や作物生育画像を収集可能である.さらに,センサやカメラの増設は計測部フレームの連結により自由に行える仕様とした.一方,植物の発芽特性評価のため,発芽数のカウントや発芽した植物の正常・異常判別を行うためのプログラム開発を試みた.前者はHSV空間に変換した後,適当な色情報を用いて二値化処理により,ほぼ確実に発芽数をカウント可能であった.後者では,発芽した植物体を予め正常および異常の2種類に分けた供試データを作成した後,CNNに基づく深層学習により,異常と正常を判別しうる分類器を作成した.開発した分類器は供試データが少なかったこともあり,現状では7割程度の判別性能であった.
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映像情報メディア学会誌
巻: 2 ページ: 260-263