研究課題/領域番号 |
15K07678
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平井 康丸 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10432949)
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研究分担者 |
山川 武夫 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20220238)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コメ生産 / 収量 / 品質 / ばらつき / 要因解析 / パターン認識 / 穀物生育モデル / 診断 |
研究実績の概要 |
多様な環境・管理方法の水田において2010~2015年の期間に収集した、精玄米収量のデータ(n=85)について、ばらつき要因を解析した。籾数、幼穂分化期~登熟中期の無機態窒素供給量および登熟期の気温・日照時間を候補の説明変数として、高・中・低の3段階の収量水準を予測するモデルを作成した。モデルの作成にはサポートベクターマシンを用いた。候補変数の全組み合わせで予測精度を比較した結果、籾数と幼穂分化期から登熟中期の間の無機態窒素供給量の2変数を説明変数にした際の正答率が79%で最大であった。また、収量の影響因子として特定された籾数の予測モデルを、幼穂分化期の草丈、茎数、SPAD値、稲体の窒素吸収量、幼穂形成期~出穂期の無機態窒素供給量・平均気温・平均日照時間を候補変数として作成した。その結果、茎数、SPAD値および幼穂形成期~出穂期の無機態窒素供給量の3変数を説明変数とし場合の正答率が67%で最大であった。生産現場のデータであるので、水管理や病虫害などの考慮していない籾数をばらつかせる要因が存在する。したがって、パターン認識を用いたアプローチは高い正答率は期待できないが、対象地域の典型的な問題点を特定し、対策を講じるには有益な方法と考えられる。 また、パターン認識手法によるアプローチと比較するために穀物生育モデルを用いた収量解析を行った。2015年および2016年の2か年のデータを用いて評価した。その結果、現在の穀物生育モデルは水ストレスの影響を考慮していないため、初期落水や中干などの水管理を伴った場合に大きな誤差を伴う、局所的な環境に対して決定する必要があるパラメータが多数ある、さらには精玄米収量の予測が困難であることから、環境や管理方法が多様な生産現場における作業意思決定支援に利用するのは困難と判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様な環境の水田における、様々な管理方法でのコメ生産事例(土壌環境、気象、生産管理履歴、生育、収量、品質データ)の収集については順調に進んでいる。平成28年度は27事例のデータを新たに蓄積した(ヒノヒカリn=139、元気つくしn=34)。 多変量解析手法を用いた収量のばらつき要因の解析については、守備範囲が整理できたので成果のまとめを行う。穀物生育モデルについては、2年間の解析により生産現場における作業意思決定支援への活用には不向きであると結論付けられた。
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今後の研究の推進方策 |
研究機関最終年度であるので、現在の所有している全データを用いて解析を行い、論文としてまとめて投稿する。また、次の研究ステップとしては、収量低下原因を特定する精度を上げ、確度の高い改善策を提示する必要がある。そのために、生産者および水田を固定した解析が必要と考える。すなわち、同一生産者と同一水田のコメ生産事例を基本のデータセットとして、平均値、標準偏差および年次変動の傾向を、他のデータセットと比較することにより、ばらつきの要因を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会の参加を一部見送ったため。また、次年度の実験に必要な物品購入を考慮して、計上した予算の一部の支出を控えた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初研究計画に入っていなかった新たな計測を実施するために必要な計測器を購入する費用として支出する。
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