研究課題/領域番号 |
15K07679
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
芝山 道郎 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (10354060)
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研究分担者 |
阿部 薫 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, その他 (70355551)
板橋 直 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (80354009)
神田 英司 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (90355272)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面流出 / 画像計測 / 自動採水 / 栄養塩 / 濁度 |
研究実績の概要 |
近年の激甚降雨の増加により農耕地からの土壌流亡とそれに伴う高濃度の栄養塩等環境負荷物質の流域水系への流出が懸念される。流出防止のため、広域的な表面流出の予測モデルの適用が期待されるが、わが国の農耕地の約五割を占める黒ボク土に関する実測値が乏しくモデルの精度向上を妨げている。本研究では実地観測を支援するための傾斜農地流出水の総合計測システムの開発をめざしている。本年度は、流出速度の非接触計測装置として、流出を自動的に動画撮影するシステムを鹿児島大学構内で試験した。構内に斜面長10m、幅2.5m、傾斜度5°の枠圃場を二連造成し、梅雨期より晩秋まで上記のシステムを設置して観測するとともに、現場の降雨量ならびに表面流出量を実測した。撮影された動画像に、粒子画像速度計測法(PIV)を適用することにより、流出速度の推定を試みた。実測の流出量と傾斜度および等価粗度係数などから推算した水深と、画像計測から求めた流速と流出量から推測した水深とは比較的よく合致していた。また降雨強度および流出量の時間的推移と、画像による推定流出速度の時間的推移はそのパターンがきわめてよく類似していた。 農業環境技術研究所の共同研究者らは、表面流出する土壌懸濁水を経時的に自動採水する装置を試作開発した。この装置は、高濃度濁水によるサンプル移送チューブの目詰まりを抑止しながら、流出水を定量的・時系列にサンプリングする仕様とした。つくば市内の傾斜枠圃場施設で試験運用し、実際の降雨・流出時の経時的な分画サンプルの物理・化学的分析により、流出水発生中の降雨強度と流出水中土壌粒子濃度の時間的推移や各種溶存イオン濃度との関係などが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属する大学内に実験観測用の傾斜枠圃場を新たに造成した。これまでは共同研究者の近くに位置するつくば市内の施設を借り受けて使用していたが、急遽計画を修正して鹿児島市の大学構内でも実験が可能な体制を構築した。そのため、当初予定していた濁度モニター用の装置に関する予備実験を先送りした。また研究開始年に共同研究者の一人が異動により離脱したため、その研究者が担当予定だった作物土壌被覆度のモニタリングに関する研究への着手が遅れている。また動画撮影装置の制御プログラムの一部に不備があり、画像撮影が中断する現象が見られたため、改修作業が必要になっている。
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今後の研究の推進方策 |
鹿児島大学構内に造成した二連の傾斜枠圃場のそれぞれに作物を栽培し、下流端で流出の動画撮影を実施する。前年度は、造成直後であったため作物栽培は断念した。前年度は動画撮影カメラ一台でのみ撮影したが、今年度は二台のカメラを二連の枠圃場のそれぞれに設置して本格的な撮影実験を実施する。濁度の画像的推定方法に関する予備実験に着手するとともに、共同研究者の復帰を待って土壌被覆の空中観測による流出量予測の高精度化を目的とする研究をすすめる。一方、流出現象のモデル化や自動分画採水、流出水の分析などを担当していた共同研究者およびその協力者がそれぞれ異動・退職したため、研究計画の修正を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
鹿児島大学構内に枠圃場を造成して流出動画観測システムを試験することは当初想定していなかった。枠圃場の管理等に時間と労力を割かれたため、濁度計測のための計測器の導入を次年度に先送りし、使用額に余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度使用予定額の一部と合わせて濁度計測用の機器を導入する予定である。
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