研究課題/領域番号 |
15K07683
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
長谷川 克也 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究開発員 (30425780)
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研究分担者 |
深見 公一郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 主任研究員 (50399424)
岡安 崇史 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70346831)
粂井 康宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (30161714) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 精密農業 / UAV / 農業情報 / ドローン |
研究実績の概要 |
農業情報取得や農薬散布などに代表される農作業へのマルチコプター(ドローン)利用が一般的になってきた。農業利用に一番注目されているマルチコプターはバッテリーの制約から1回のフライトが15分程度と短く、作業効率の点から実際の各種農作業においてマルチコプターが最適ではなく、速度とコストから固定翼機による情報収集が望ましい場面や、田植え直後の水田においては空を飛ばずに水面を滑走するプロペラボートの利用が望ましい場面など、これまでの実地調査によると作業状況を検討し最適な物を選ぶことが作業効率を上げコストを低減することが実証された。平成28年度は実験により問題が見つかった既存機体の改良のほか、長時間情報収集に用いる固定翼機の新規製作、水田農薬散布用プロペラボートの機体製作を行った。また、取得した農業情報を伝送するための無線装置類の開発と、準天頂衛星「みちびき」の高精度測位データを活用し高精度自律飛行のための機体開発と飛行アルゴリズム開発を行った。これにより非常に位置精度の高い機体制御が可能となった事で精度の高い農薬散布などの作業が行えるようになったことで、情報と作業の高度な連携が実現可能となりドローンを使った精密農業の高度化を進めることが可能となった。 そのほかに、農村、過疎地区の災害時における支援対策として鹿児島県大島医師会と協力し血液、薬品等の物資輸送のシミュレーションを行い、鹿児島県、海上保安庁、鹿児島県立病院、奄美市等と合同で災害救助訓練を行い溺者救助、救援物資の投下実験に成功した。これにより単なる農機具としてのマルチコプターだけではなく、近年頻発する農村部での災害に対し初動救援の活用として利用できる事が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定されていた飛翔体の製作、改良は順調に進行したことで、マルチコプター、固定翼機、ヘリコプターを用いて作業実験、情報収集実験をこなすことで、各機体の特性による作業適応性の知見を得る事ができた。また、実験を進める中で空からの作業のみならず地上作業の優位性に着目し無人地上走行車両、水上農薬散布用プロペラボートの開発、実験を行うことで多角的な視点からのドローン利用の研究に成果を得ることができた。 また、精密農業に向けたドローンは災害発生時に物資輸送などに利用できる事から救難訓練に参加し、情報収集用固定翼機や輸送用の大型ドローンを利用して捜索、物資輸送、救命浮環投下などの実践訓練において利用可能であることを実証した。
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今後の研究の推進方策 |
農業に用いる飛翔体その他の機器類の開発はほぼ終了した事から、今後は秋田県、福岡県などの実験協力を取り付けた圃場を使い、情報収集および農作業の実践的な実験を行う事を予定している。これまで運転に高度な技能を要していたヘリコプターを使った農薬散布を、準天頂衛星を用いた精密測位を利用した自動飛行と自動離着陸を実現することで、運用に熟練技能を排除し誰でも使える農業用ドローンを実現させる。 本研究に着目したマレーシア工科大学と共同で、東南アジアにおける準天頂衛星を利用した精密測位をもとにした農業情報とドローンの農業利用について研究を始めることで、日本の精密農業との比較を行い本研究成果を国際貢献に役立てたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた福島県の放射性物質汚染区域調査を次年度に送っため、予定した旅費を使用しなかったことによる
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に原子力発電所付近の農地調査をおこなう
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