研究実績の概要 |
ゲノムを1セットしかもたない半数体ES細胞は、遺伝子の機能を調べる上で非常に有用である。しかし半数体ES細胞を継代培養するとおよそ3週間で全て2倍体化してしまう。細胞分裂異常によりゲノムが4倍体になるとp53依存的なチェックポイントがはたらき、細胞分裂の停止(p21活性化)および細胞死(Bax活性化)へと導く(Andreassen et al., Mol Biol Cell, 2001; Fujiwara et al., Nature, 2005)。我々は、ゲノムが半分量の半数体でも、p53依存的チェックポイントがはたらき、2倍体化した細胞の増殖が有利となると予想していた。そこで昨年度はCRISPR/Cas法によりp53-KO半数体ES細胞の樹立を行なった。 今年度は、p53-KOおよび野生型の半数体ES細胞を、FACSで半数体細胞のみをソートし、培養7、9、21日目にサンプリングを行った。こららの細胞は70%エタノールによる細胞固定後、PI染色を行った後、FACSVerse (BD)により倍数性を確認した。しかしながら、予想に反して、いずれもソート後21日目で完全に2倍体化していることが明らかとなった。念のため、p53転写阻害剤であるPifithrin-α (10 μM)添加区と非添加区でも同様の比較を行なったが、やはりp53を阻害しても2倍化を抑えることはできなかった。我々の研究から、4倍体の細胞死や排除はp53によって制御されているが(Horii et al., Sci Rep 2015)、半数体の細胞死や排除はp53とは別のシステムで行われていることが明らかとなった。
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