研究実績の概要 |
期間内に次の様な成果を上げるに至った。 1.ニワトリ小腸の粘膜上皮には、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1とニューロテンシン(NT)が共局在する内分泌細胞が存在する。これらの細胞群は、陰窩に主に存在し、絨毛上皮ではNTのみを産生・分泌する細胞へと特殊化することが明らかになった。無タンパク質飼料およびこれにメチオニンまたはリジンを添加した飼料を給餌したニワトリにおけるGLP-1とNTの共存については、対照鶏と大きな変異を見せない傾向にあった。 2.無タンパク質飼料にメチオニンまたはリジンを添加した実験飼料を供試鶏に給与した後に、小腸におけるGLPの前駆体であるプログルカゴンの遺伝子発現をin situハイブリダイゼーション法で解析したところ、遺伝子を発現している細胞の分布密度は、対照群>メチオニン群>リジン群>無タンパク質群の順で高くなっていた。また、この変化はグルカゴン様ペプチド(GLP)-2の発現とほぼパラレルに推移することを明らかにした。 3.ニワトリ回腸において、神経ペプチド(VIP, NPY, SOM)および一酸化窒素合成酵素(NOS)の分布を免疫組織化学法により調べたところ、VIP免疫反応陽性神経線維は粘膜上皮直下の固有層に豊富に見出された。NPY免疫反応陽性神経線維は固有層に、SOM免疫反応陽性神経線維は平滑筋層にそれぞれ見出された。また、NOS免疫反応陽性神経線維が固有層と平滑筋層に見出された。VIP免疫反応陽性神経線維が、GLP-1免疫反応陽性細胞の近傍に見出されたが、直接の終末像は観察されなかった。 4.本研究から派生した実験より、GLP-1は小腸陰窩において生合成され、絨毛上皮では分泌されるのみであることが判明し、GLP分泌細胞の陰窩-絨毛軸での動態が解明された。
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