研究課題/領域番号 |
15K07690
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
濱野 光市 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (70303443)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | ウシ精子 / 走温性 / 温度勾配 / 制御因子 / 発現機構 / 運動解析 |
研究実績の概要 |
本研究は走温性の未解明な基礎的研究を完成し、走温性を利用した精子の新しい診断方法や評価法を畜産現場に応用・展開するための基礎となる研究を行う。平成27年度は以下のことを明らかにした。 1.走温性発現因子の探索:顕微鏡に装着して25~45℃の温度域から任意の温度勾配を設定し、移動中の精子の運動を詳細に計測できる装置を利用して異なる温度勾配を設定し、精子を検査チャンバーに導入し検査した。高温度域に移動した精子数を計測し、走温性の発現開始温度、走温性維持の最適温度勾配を明らかにした。TritonX-100による除膜精子の運動、特に超活性化運動誘起条件を調べ、カルシウム、ATPの関与を確認した。 2.走温性発現機構の解析:温度勾配装置による走温性の計測において、スライドグラスとカバーグラスの間隙が100μm、精子の移動経路が22×40mmのチャンバーに精子を導入することで運動性を詳細に、正確に解析できる方法を確立した。解析用ソフトウェア(Bohboh)の利用により、精子の移動方向の変化と尾部運動の詳細で正確な解析が可能になり、チャンバー内の温度勾配分岐部における精子の変化を調べた。10秒間、1000画像を記録後、ソフトウェアを操作し、指定した精子の頭部の解析から走温性に伴う移動性、方向の変化を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度勾配作製装置を利用したウシ精子の走温性の発現が可能となった。 走温性発現開始温度、維持に最適な温度勾配、維持時間を確認できた。 解析用ソフトウェア(Bohboh)の利用により、走温性発現精子の頭部、尾部の解析が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
1.走温性発現経路の解析:走温性発現精子の細胞膜流動性、カルシウム動態、カルシウム濃度の変化、および分子薬理学的調節機構を調べる。 1)走温性発現精子の細胞膜流動性の解析:異なる温度勾配内で走温性発現精子の細胞膜流動性を比較、解析することで走温性の発現経路を探索する。2)走温性発現精子の細胞内カルシウム動態の解析:走温性発現精子の移動方向の変化に影響する、頭部、尾部におけるカルシウムの変動を解析する。温度勾配、時間経過によるカルシウム濃度の変化、高濃度カルシウムの分布変化を計測することで、因子の受容部分、受容体、発現経路を調べる。3)走温性発現精子におけるカルシウム作用機構の解明:カルシウム作用に関与する電位依存性チャネル、TRPCチャネル、細胞内放出チャネル、CatSper関連チャネル、カルシウムポンプのそれぞれの阻害剤である、ベラパミル、SKF、ライアノジン、ミベフラジル、タプシガルギンを添加し、走温性を調べることで、因子を直接、あるいは、間接的に受容するチャネル部分、およびカルシウムシグナル伝達機構を明らかにする。4)走温性発現精子の分子薬理学的調節機構の解明:複数の脱リン酸化、およびリン酸化に関与する酵素阻害剤を走温性発現経路に作用させ、走温性発現精子の分子薬理学的調節機構を明らかにする。 2.走温性発現精子の受精機能の解析:受精能獲得前後における走温性と発現順序を解明し、走温性発現精子の受精能獲得、超活性化運動、先体反応を調べる。1)走温性発現精子の超活性化運動の解析:超活性化運動誘起前後の精子を温度勾配に導入し、走温性と超活性化運動を調べる。2)走温性発現精子の受精能獲得、先体反応、発生能の解析:走温性発現精子頭部の染色性の違いにより受精能獲得と先体反応を評価する。走温性誘起前後の精子をウシ卵子に媒精し、受精率を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
独自の事前研究機器、試薬、消耗品により研究が進行できたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成28年度請求額と合わせて、ガラス器具、プラスチック製品、酵素、発光試薬、蛍光試薬を購入し、利用する。
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