研究課題/領域番号 |
15K07690
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
濱野 光市 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (70303443)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | ウシ精子 / 走温性 / 温度勾配 / 制御因子 / 発現機構 / 運動解析 |
研究実績の概要 |
本研究は走温性の基礎的研究を完成し、走温性を利用した精子の新しい診断方法や評価法を畜産現場に応用するための研究を行う。平成29年度は以下のことを明らかにした。 1.走温性発現機構の解析:継続して、走温性発現精子の移動性、方向の変化を調べ、速度、直線性、尾部屈曲の変化を確認した。2.走温性発現精子の細胞内カルシウム動態の解析:継続して、走温性発現精子のカルシウムの動態を解析した。温度勾配、時間経過によるカルシウム濃度の変化を調べ、高温域における精子のカルシウム濃度の増大、温度の上昇・下降に応じた精子のカルシウム濃度の可逆的変化を確認した。3.走温性発現精子におけるカルシウム作用機構の解明: 継続して、電位依存性L型、T型カルシウムチャネル阻害剤であるベラパミル、ミベフラジルとSOCチャネル促進剤であるタプシガルギンを添加後、精子の走温性を調べ、ベラパミル、ミベフラジルによる阻害、尾部打頻度の低下、タプシガルギンによる発現を確認した。継続して、カルモジュリン阻害剤のW-7、カラクシン阻害剤のレパグリニド、およびTRPカルシウムチャネル阻害剤のSKF、TRPVカルシウムチャネル阻害剤のルテニウムレッド、RN-1734の添加による走温性の阻害、TRPカルシウムチャネル促進剤のGSK1016790Aの添加による走温性の発現を確認した。4.走温性発現精子の受精機能の解析:継続して、受精能獲得前後における走温性の発現を調べ、受精能獲得との関係を確認した。粘性培地:1%メチルセルロース添加BO液および非粘性培地:BO液の温度勾配における移動精子を調べ、それぞれ走温性を確認した。非粘性培地と比べ、粘性培地における走温性の発現は低下したが、超活性化運動を誘起するプロカイン処理および受精能獲得を誘起するヘパリン・カフェイン処理精子の発現の低下率は小さいことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の大学の管理運営等に関わる業務が当初の予想以上に多くなった。あわせて、当初の研究計画の一部(走温性発現精子の分子薬理学的調節機構および受精機能の解析)を遂行するのに、想定以上に時間を要しており、完了には時間を要している。なお、平成29年度の進捗状況は以下のとおりである。 ・温度勾配、時間経過によるカルシウム濃度の変化を調べ、高温度域における精子のカルシウム濃度の増大、温度の上昇・下降に応じた精子のカルシウム濃度の可逆的変化を確認した。 ・カルシウムチャネル阻害剤であるベラパミル、ミベフラジルとSOCチャネル促進剤であるタプシガルギンを添加後、精子の走温性を調べ、ベラパミル、ミベフラジルによる阻害、尾部打頻度の低下、タプシガルギンによる精子走温性の発現を確認した。 ・カルモジュリン阻害剤のW-7、カラクシン阻害剤のレパグリニド、およびTRPカルシウムチャネル阻害剤のSKF、TRPVカルシウムチャネル阻害剤のルテニウムレッド、RN-1734の添加による走温性の阻害、TRPカルシウムチャネル促進剤のGSK1016790Aの添加による走温性の発現を確認した。 ・粘性培地:1%メチルセルロース添加BO液および非粘性培地:BO液内のいずれにおいても走温性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
1.走温性の発現経路の解析:走温性発現精子の細胞膜流動性、カルシウム濃度の変化、分子薬理学的調節機構を調べる。 1)走温性発現精子の細胞膜流動性の解析:異なる温度勾配内で走温性発現精子の細胞膜流動性を比較、解析することで走温性の発現経路を探索する。2)走温性発現精子の細胞内カルシウム動態の解析:走温性発現精子の温度変化、および移動方向の変化に影響する、頭部から尾部におけるカルシウムの変動を解析する。温度変化によるカルシウム濃度の変化を計測することで、因子の受容部分、受容体、および発現経路を調べる。3)走温性発現精子におけるカルシウム作用機構の解明:カルシウム作用に関与するTRPV3、4αPDDおよびチメローザルを添加し、それぞれの作用に応じて精子の走温性を調べることで、カルシウムシグナル伝達機構を明らかにする。4)走温性発現精子の分子薬理学的調節機構の解明:複数の脱リン酸化、およびリン酸化に関与する酵素阻害剤を走温性発現経路に作用させ、走温性発現精子の分子薬理学的調節機構を明らかにする。脱リン酸化酵素阻害剤のカリクリンA、フォスファチジルイノシトールキナーゼ阻害剤のLY294002、細胞膜透過性AMPK阻害剤:Compound Cを精子浮遊液に添加し、走温性を検査することで候補分子の薬理学的阻害機能を同定する。 2.走温性発現精子の受精機能の解析:走温性発現精子の超活性化運動、発生能を調べる。 1)走温性発現精子の超活性化運動の解析:超活性化運動誘起精子の走温性と超活性化運動の発現を調べる。2)走温性発現精子の受精能、発生能の解析:走温性発現精子をウシ卵子に媒精し受精率を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:独自の事前研究機器、試薬、消耗品により継続して研究が推進できたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度使用額は平成30年度請求額と合わせて、ガラス器具、プラスチック製品、酵素、発光試薬、蛍光試薬、凍結精液の購入に利用する。
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