研究実績の概要 |
本研究課題では、最近開発された次世代型KOと呼ばれるCRISPR/Cas9などのゲノム編集技術を用いてブタ(マイクロミニブタ)胎仔由来の繊維芽細胞(MPEF)ゲノム内の特定遺伝子(異種移植関連遺伝子alpha-1,3-galactosyltransferase [alpha-GalT]や動脈硬化責任遺伝子low density lipoprotein receptor [LDLR])を完全に破壊し、我々がこれまでに独自に開発したKO細胞のみを効率的に濃縮する系(targeted toxin-based selection)を用いて遺伝子改変MPEF株を作製し、最終的にその細胞をドナーとする体細胞核移植によるクローン個体作製、それによる動脈硬化モデルブタ作製を試みる。平成29年度では遺伝子改変MPEF株の特性解析、体細胞核移植による胚盤胞、ブタ個体作成を行った。その結果、alpha-GalT, LDLR遺伝子のKOを行い、得られた株の~30%はdouble ホモKOであった。組織化学染色、抗体を用いた免疫染色からdouble ホモKOではalpha-GalT, LDLRの蛋白発現は皆無であった。double ホモKO細胞をドナーとする核移植由来の胚盤胞でも両者の蛋白発現は皆無であった。また、胚盤胞(クローン胚)の分子生物学的検討から、両遺伝子の変異が確認された。そこで、alpha-GalT、LDLR 遺伝子についてdouble ホモKOと判定されたMPEF細胞をドナーとする核移植を行い、発生した2細胞期胚をrecipientブタ卵管に移植した(50~100/頭)。2頭の♀の内、1頭は超音波検査で胎仔の存在を示唆する陰影が取れたが、時間経過とともにそれは消失。結局、産仔は得られなかった。核移植後、胚盤胞までは発生するが、着床以降の発生が不全となる原因を現在検討中である。
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