研究課題/領域番号 |
15K07696
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
須田 義人 宮城大学, 食産業学部, 教授 (90404847)
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研究分担者 |
小林 栄治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, ユニット長 (00186727)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / 黒毛和種 / ASS1 / 脂肪前駆細胞 |
研究実績の概要 |
宮城県畜産試験場より提供された宮城県基幹種雄牛産子である24ヶ月早期肥育試験に供された黒毛和種枝肉A5およびA2~A3ランクの枝肉100頭分からゲノムDNAをキアゲンのキットで抽出した後に,メチル化チップ解析を実施した。委託結果より,大きな差異のみられた約5000領域から,統計的に有意な領域250領域に絞り,クラスター解析を行った。さらに,DNAメチレーションサブトラクション法(MSRDA法)およびバイオインフォマティクス解析によりメチル化に差異のある領域の絞り込みを試みた。また,前述のA5およびA3ランクの黒毛和種の血液および脂肪組織から,前者はキアゲン,後者はニッポンジーンおよびタカラバイオのキットを用いてゲノムDNAを抽出し,バイサルファイトシーケンシング(キアゲン)によるDNAメチル化サイトパターン解析を行った。さらには,牛筋肉内脂肪前駆細胞株(以下,BIP細胞)における遺伝子発現解析を行った。 ヒトゲノムでエピジェネティクス機構の影響を受けるとされる62万領域のCpG領域のうち,統計的解析により5000領域まで,さらには250領域まで絞り込みを行ったところ,明瞭なメチル化の差異を確認することが出来ただけでなく,クラスター解析により有意な関係性のある遺伝子群まで絞り込むことが出来た。また,格付間のメチル化度に差異のある領域からASS1遺伝子のプロモーター領域を絞り込むことが出来た。そして,ASS1遺伝子が脂肪細胞への分化初期と脂肪蓄積に関与し,結果的にしもふり形成に貢献しているという結果から,しもふり形成に関わる一部の遺伝子は,エピジェネティクスなメカニズムを介するということと,正確かつ効率的な改良の促進には,環境と遺伝子の相互作用に関する情報の取り込みが重要であることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一部のDMAサンプルの精製状態が悪く、バイサルファイト反応がうまく進んでいない可能性がある。結果的に、きれいなシーケンスデータが得られずに苦慮してきた。しかしながら、改善策を試み、次年度で予定の解析まで追いつく見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年においては、平成27年度~28年度までの結果を踏まえ、さらに不十分な部分を再現性をとりながらデータを加える。また、平成29年度においては、再度、ウシ脂肪前駆細胞を用いた脂肪細胞分化と候補遺伝子群の発現動態の調査をメチル化チップで再検証し、絞り込んだ候補遺伝子群およびメチル化領域の細胞分化ステージにおける発現動態をリアルタイムPCR法で調査する。さらには、胚および若齢期ゲノムDNAメチル化多型と成長後の多型比較による相関解析を実施し、表現型に見られる特徴を検証する。特に、①胚性ゲノムDNAの候補遺伝子プロモーター領域のメチル化多型と枝肉成績との関係、②若齢期個体(5カ月齢)の候補遺伝子プロモーター領域メチル化多型と枝肉成績との関係、③肥育後(26ヶ月齢)の候補遺伝子プロモーター領域のメチル化多型と枝肉成績との関係をそれぞれ検証する。最後に、シミュレーションデータを用いて、ゲノムメチル化多型効果を数学モデルに反映した遺伝パラメータ推定(遺伝率および育種化)を試みて、現行モデルとの正確度を比較する。以上の実験を、最優先で検討していく。概ねのサンプリングは終了していくことから、精力的に進めていく。また同時に、これまでの成果を論文公表をしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
①シーケンス解析やバイサルファイト反応用試薬等を節約し、無駄なく使用することを心がけた結果である。 ②計画がやや遅延しているため、その分の研究費を次年度に使用額として繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
①確実に結果が出るように、節約を心がけると同時に、十分な試薬を購入する。 ②遅延部分を早期に回復するために、予定していた試薬キット類を購入して、実験を実施する。
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