研究実績の概要 |
主たる研究目的は、牛肉由来ゲノムDNAのメチル化多型と脂肪交雑との相関性について、家系間や格付け間、部位間を中心に調査し、関係性の強いゲノム領域を特定することを主な目的とした。先ずは、黒毛和種筋肉内脂肪前駆細胞(BIP細胞)を供試しメチル化ビーズアレイ解析(メチル化チップ解析)によって約800,000領域のメチル化領域を検出できた。その800,000領域の内、プロモーター領域にあるCpGアイランド数は183,815領域あることが推定された。牛の遺伝子数が30,000から40,000とすると単純計算で1遺伝子当たり平均4から6か所のメチル化領域を持ち制御されていることが概ねで推察された。次に、メチル化差異のある領域を検出するサブトラクション法であるMS-RDA法を用いて、格付間で比較した所、特にASS1遺伝子のプロモーター領域にメチル化度に差異があるように特異的に検出できた。その領域について、脂肪組織由来のゲノムに関しても格付間で比較した所、メチル化多型が確認された。続いて、ヒトゲノムでメチル化の影響を受けることが明らかにされている32領域に関するPromoter qPCR Array解析を試み、メチル化度と理化学特性等との相関解析を行った結果、肉質や食感に関わる要素とBRCA1、LOXのプロモーター領域のメチル化度との間で、有意な負の相関が認められた。特に、LOX遺伝子のプロモーター領域のメチル化度は、牛肉由来ゲノムDNAにおいてメチル化度が高く、このことは生体内でリジン6オキシダーゼ発現が抑制される傾向にあることを示しており、リジン代謝が促進され、脂肪蓄積能が高いということが推察された。以上のことから概ね主たる目的を達成でき、黒毛和種において肉質や食感に関わる脂肪交雑と関係性の深いメチル化領域の候補を見出せたと考えている。
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