研究課題/領域番号 |
15K07697
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
櫻井 敏博 東京理科大学, 薬学部, 助教 (70568253)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウシ / 内在性レトロウイルス / 胎盤機能獲得 / 胚機能獲得 |
研究実績の概要 |
本研究は、ウシ着床周辺期胚で発現する内在性レトロウイルス(BERV)の機能を解析することを目的とする。先の科研費(若手研究B: 25850183)において見出したBERVの1つについてさらに解析を進めた結果、LTR/ERVKファミリーに属するLTRを持つため、BERV-K3と命名した。BERV-K3は、着床前の胚トロホブラスト細胞には発現が認められず、着床以降の胚トロホブラスト細胞に発現が認められ、妊娠45日で発現が最高に達し、妊娠150日のCotyledonでも発現が認められた。このことからBERV-K3は、胎盤形成・胎盤機能維持に深く関与する因子であると考えられた。BERV-K3は、non-coding RNA(ncRNA)に入り込む形で遺伝子上に存在していることが新たに分かり、現在ncRNAとの関係を検討しているところである。またBERV-K3は、着床後の胚のみならず、肝細胞などにも発現しており、これら組織と胚における機能とに共通項があるのか否か検討している。HIVなどのレトロウイルスは、multivesicular endosomeの中で出芽し、エクソソームの放出経路を利用して放出される。つまりBERVの機能の1つにエクソソームの形成・放出があるのではないかと考えている。その検討に先駆け、妊娠子宮腔内にエクソソームが存在するか否かヒツジ子宮灌流液を用いて解析を行った。その結果、子宮由来のエクソソームだけでなく、インターフェロンタウを内包した胚由来のエクソソームが子宮腔内に存在した。そこで現在、エクソソームの形成過程にBERVが関わっているか否かをウシ胚由来細胞CT-1などを使用して検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の申請時の実施計画では、平成27年度はレトロエレメントの機能解析と発現制御機構の解明であった。各BERVのシークエンス解析に少し遅れが出ている。BERVの機能解析は、解明できていないが、可能性のある機能として胎盤形成・機能維持やエクソソーム形成に関与していると考えている。その前段階として、子宮腔内のエクソソームの存在を確認し、現在投稿中である。また、BERV-K3に関しては、申請時当初予測できなかったlncRNAとの関連性が明らかとなりつつあり、その解析を行っているところである。したがって、現在までの進捗状況は概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
比較的解析が進んでいるBERV-K3に関しては、lncRNAとの関係を明らかにし、それらを制御する共通のLong terminal repeat(LTR)に着目して解析を進めていく。具体的には、BERV-K3の5’側および3’側LTRのクローニングを行い、プロモーター活性化機構を解析し、BERV-K3の発現調節機構を解明する。また他のBERVに関してもBERV-K3と同様に進めていく予定である。その際siRNA、CRISPR/Cas9などを使用し、BERVのノックダウン/ノックアウトを作成ウシ、エクソソームの形成を含めた機能解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
476円と少額であり必要な物品等購入できないため、次年度に繰越をした。
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次年度使用額の使用計画 |
研究に必要な物品等に充当する。
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