研究課題
哺乳類は原基となる胎生機能を基盤に新たな遺伝子を獲得し、既存の遺伝子の機能を置換させ、種特異的な胎盤形態となっていった。その新たな遺伝子とは、進化の過程で感染し、内在化したレトロウイルス由来の遺伝子であると考えた。そこで、ウシ着床周辺期胚を用いてトランスクリプトーム解析を行い、着床周辺期の胚において発現するウシ内在性レトロウイルス(BERV)を以下の条件下で探索した。①オープンリーディングフレームが少なくとも100個のアミノ酸をコードするあるいは少なくとも1つの膜貫通ドメインをもつBERV由来の塩基配列だと考えられる遺伝子、②トランスクリプトーム解析に用いたウシ胚(妊娠17、20および22日)のうち、少なくとも2日において発現する遺伝子を抽出した。その結果、着床周辺期胚で発現する10種のBERVを見出した。そのうち、胎盤形成に重要なWNTシグナルによって誘導されるBERVを世界で初めて同定し、BERV-K3と命名した。BERV-K3は、哺乳類が進化の過程で胎盤を獲得するにあたり新たにゲノムに挿入されたPEG10と同様にCCHC型ジンクフィンガードメインを有するGag/Pol由来であった。BERV-K3は着床後の胎盤形成期胚に特異的に発現するだけでなく、腎や腸管、肝臓、皮膚といった組織においても発現していた。BERV-K3の機能解析を検討したが、本申請期間内ではBERV-K3の機能を解明することができなかった。また別のBERVとして、第6染色体に存在し、着床前の胚特異的に発現する遺伝子を見出した。このBERVもまたGag/Pol由来であった。このBERVに関しても、本申請期間内では機能を明らかにすることができなかった。本研究成果により、ウシ胚および胎盤に発現するBERVを見出すことができた。そして、これらBERVがウシ特有の妊娠形態の一端を担うことが予想された。
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