ウシ胎盤由来線維芽細胞、牛子宮上皮細胞、ウシ受精卵を用いて、インビトロ胎盤構造モデル(子宮上皮―胎盤の重層構造)の構築を試みた。培養液DMEM中では受精卵は接着せず浮遊し、その後黒化退行した。前もって胎盤由来線維芽細胞を敷いておくと受精卵は接着しコロニーを形成したが、その後大きな変化はなく退行した。子宮上皮細胞を敷いた場合では受精卵は接着せず、上皮細胞の剥離が起きた。一方、子宮上皮細胞と胎盤線維芽細胞を混合して敷いた場合(混合培養)、受精卵は接着・コロニーを形成し、その後盛んに小胞を形成した。小胞は浮遊・再接着し、新たなコロニーを形成した。しかしコロニー形成した受精卵由来の栄養膜細胞は子宮上皮細胞を押しのけて伸展成長しており、重層構造は形成されなかった。先の混合培養系で発生した小胞を子宮上皮単層培養上にのせておくと、接着しないが数日後新たに子小胞を形成し、この小胞が子宮上皮細胞上に接着した。接着した栄養膜細胞はコロニー形成し、2次小胞を形成した。この小胞は上皮細胞接着能を維持しており、また無細胞のDMEMでも接着コロニー形成し継代が可能であった。このコロニーはヘキスト染色、ギムザ染色で栄養膜細胞の特徴である2核細胞を含んでいた。しかし、胎盤剥離誘導シグナルと推定されるオキソアラキドン酸で細胞剥離を誘導した場合、栄養膜細胞下に細胞はなく、重層構造は形成されていなかった。しかし、2重底ディッシュ(トランズウェル)に子宮上皮細胞と胎盤由来線維芽細胞を敷いておき、そこに受精卵を載せた場合に形成されるコロニーでは重層構造が確認できた。
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