トリインフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスはそれぞれ細胞膜上に存在するシアル酸α2-3ガラクトースとシアル酸α2-6ガラクトースという異なる糖鎖を受容体として特異的に結合することで宿主細胞に進入し、感染すると言われている。それぞれの受容体に特異的に結合するレクチンを用いて、鳥類バイオサイエンス研究センターで系統保存しているニワトリとウズラ、および畜舎周辺に生息する野生動物のの気道と消化管においてインフルエンザウイルス受容体の量をスクリーニングした。本年度はまだ解析が終わっていない系統について受容体の分布と量を調べるとともに、生きたままのニワトリで気管と直腸から細胞を採取し、受容体の量を調べる方法の確立を目指した。 研究全体を通して、トリインフルエンザウイルス受容体はニワトリ22系統の中でOSとプチコッコで少なく、ブラマバンタム交雑系、ベルジアンビアデットバンタム、ブラックミノルカ、ゲームバンタムで多かった。ウズラ20系統ではNIES-L系統で最も少なく、AWE系統で多かった。生きたニワトリの気管や直腸に綿棒を挿入して粘膜を擦り取り、細胞を採取してレクチン染色を行った。顕微鏡下で細胞塊を確認できたが、気道の線毛上皮細胞や、消化管の吸収上皮細胞を同定することは困難であった。レクチン染色の結果から、その個体が持つトリインフルエンザウイルス受容体の量を判断することは可能であるので、今後この判別方法を用いてトリインフルエンザ受容体の量が少ない、すなわちトリインフルエンザに感染しにくい系統の育種が可能である。畜舎周辺に生息する野生動物では、スズメ、ヒヨドリ、キジバト、アカネズミが受容体を多く持っているので高病原性トリインフルエンザウイルスを畜舎内に持ち込む可能性が高いと考えられる。
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