研究課題
本研究は、自由行動下の家畜の継続的な心電データの簡易な取得法および自律神経活動評価法を確立し、様々な家畜生産現場において本手法が利用可能であるかを検証することを目的としている。初年度である当該年度は、まず自由行動下の反芻家畜のストレス評価法として心拍変動解析が利用できるかを検討するため、市販のヒト用心拍計測装置を用いて、放牧条件下のウシや山羊、めん羊に対し、心拍数の基準となるR-R間隔計測を実施した。ここで、自由行動下において最低1日ほどの継続的な計測を実現するため独自の装着法を検討し、従来動物に用いられているA-B誘導法に従った位置に電極を配置して計測を行い、得られたデータに対して心拍変動解析を行い、5分間隔での心拍変動評価値を算出した。一方、心電図波形の成因である心筋の活動電位の解析法の検討を実験動物に対しても行った。さらに、活動自体が心拍変動に及ぼす影響を考慮するため、加速度指標(ODBA)を心拍変動評価値の補正に用いる方法を新たに検討した。その結果、データの計測及び解析に成功し、従来困難であった自由行動下での家畜のストレス評価法として利用可能であることが示された。一方、従来のA-B誘導法での測定は、独自の装着法を用いてもその装着に労力がかかり、また自由行動下では電極ずれが発生するリスクが高く、長時間安定して計測するにはかなりの経験を要する。そのため、家畜の継続的な心電データの簡易取得法として、背中上部のみに電極を配置する方法を新たに検討した。具体的には、除毛無しで生体電位を取得するため、高感度(高S/N比)の独自の電位計測装置と櫛型アクティブ電極を用いた方法を試みた。その結果、高感度の生体電位計測装置を用いる限りはこの方法が有効であることが示された。これらの実施内容について、国際学会1件および国内学会1件において報告を行い、現在国際学会誌への投稿を検討中である。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度である当該年度は「家畜動物に対する心電データ取得および解析法の確立」を目的としており、具体的には、反芻家畜に対して心電データであるR-R間隔計測装置や行動センサーなどを装着し、舎飼いおよび放牧条件下でデータを取得し、それらを解析することを計画していたが、それらを実際に実施することができた。さらに当該年度では次年度に計画していた「データ取得法の改良」に対しても一部実施し、一定の成果を得ることができた。そのため結果として、進捗状況は当初の計画以上であったと考えられる。
当該年度で計画以上の進捗が見られたため、次年度以降は現状の計画を少しでも前倒しで実施したいと考えている。ただし、計画実施に対する1つの懸念事項として、当該年度の試験結果より、多数の心電データを簡易に取得するには、当初考えられていた計測装置よりも高感度で高価な装置が必要となることが判明した点が挙げられる。そのため、当初の計画予定よりはデータ取得は少なくなる可能性がある。しかしながら、仮にデータ取得が少なくなったとしても、利用可能性を示すには十分であるため、本研究課題の目的を達成することができると考えられる。
遠隔地(熊本県草地畜産研究所)での実地試験が大幅に中止となり、それに伴い調査・分析補助が不要になったこと等による。
初年度で中止となった試験を他の地域で複数回実施するための旅費および試験消耗品費での利用や国際学会参加に対する経費利用等を予定している。
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すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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