研究課題
本研究は、自由行動下の家畜の継続的な心電データの簡易な取得法および自律神経活動評価法を確立し、様々な家畜生産現場において本手法が利用可能であるかを検証することを目的とした。初年度では様々な反芻家畜を対象として、自由行動下で経時的に心電データによる心拍間隔計測ができるかを検討し、一定のデータ取得法を確立することができた。次年度以降では、初年度で確立した心拍間隔計測による心拍変動評価をもとにした自律神経活動評価法が、様々な家畜飼養条件下で利用可能かを検討するため、山羊やめん羊といった小型反芻家畜での試験のみならず乳牛繁殖雌牛や肉用肥育牛などでも試験を行った。この際、特に2年次から3年次にかけては、3軸体加速度を加速度センサーで同時取得し心拍変動評価の補正係数として用いることで、自由行動下での自律神経活動評価をより適切にできるかを検討し、その解析方法を確立することができた。さらに最終年度では、前年度までの取得データをもとに解析法をさらに深化させ、暑熱ストレス下やビタミンA制限下に対する家畜の心拍変動評価を実施した。暑熱ストレスが心拍変動に及ぼす影響を検討した結果としては、動的体加速度を用いて補正を行う事で、暑熱ストレスが主に交感神経系に働き、特に暑熱負荷が強い場合において非線形的な自律神経活動が生じることが示唆された。一方、ビタミンA制限下の肥育牛では何らかの応答で心拍変動に影響が見られ、また動的体加速度での評価でも有意な影響が見られ、これらのことからビタミンA制限により生理的かつ物理的な何らかのストレス応答があり自律神経系に影響を及ぼす可能性があることが示された。さらに、加速度センサーによる動的体加速度に加え他のセンサーによる物理指標も用いて家畜の行動状態を詳細に評価することが、今後、自由行動下の家畜の自律神経活動評価における重要なツールとなり得ることが示された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Frontiers in Physiology
巻: 9 ページ: 1063
10.3389/fphys.2018.01063