研究課題/領域番号 |
15K07706
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
河原 聡 宮崎大学, 農学部, 教授 (30284821)
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研究分担者 |
仲西 友紀 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20717889)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 畜産食品 / フィタン酸 / フィトール / 反芻動物 / ルーメン微生物 / 免疫担当細胞 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
食品成分の機能性研究の進展から、人の健康に有益な効果を現す生理活性物質が数多く発見、報告されている。動物性脂肪に含有される成分については、脂質異常症改善作用を持つオレイン酸や抗発がん作用を持つ共役リノール酸のなどが報告されている。これらに加えて、近年、反芻動物由来脂肪中に見出されたフィタン酸が新奇の機能性脂肪酸として期待されている。本研究では、このフィタン酸による反芻動物由来の乳・肉の付加価値向上を目指した研究に取り組んでいる。本年度は(1)ルーメン微生物によるフィタン酸生成機構に関する検討、(2)フィタン酸が免疫細胞の機能に及ぼす影響、および(3)乳・肉中のフィタン酸含有量調査を引き続き実施している。 (1)反芻動物の第一胃(ルーメン)はフィタン酸生成の場と考えられており、飼料に由来するクロロフィルの構成要素であるフィトールからルーメン微生物の作用によりフィタン酸が生成すると考えられている。本年度は、前年度に確立した実験系により、学内牧場の乳牛から採取したルーメン微生物の培養物を用いてフィタン酸生成に関する培養試験を行った。その結果、ルーメン微生物によるフィトールの生成がほぼ認められなかったこと、フィトールからのフィタン酸生成量も多くなく、国内の牛と海外の牛におけるルーメン微生物の構成割合に差があることが予測された。 (2)各種の免疫細胞に対するフィタン酸の影響について引き続き検討を行い、食品に含有されるフィタン酸異性体は、化学合成により調製された市販フィタン酸標品と同等あるいはそれ以上の炎症性サイトカイン産生抑制作用を持つことが明らかになった。 (3)乳・乳製品を中心に引き続きフィタン酸含有量調査を実施している。現在まで、海外で生産された乳・乳製品と同等のレベルでフィタン酸を含有している国産乳は見出されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、申請書に当初計画として記載した、フィタン酸の生成機構および免疫機能の就職に関する事項の検討が着実に実施されている。それらの研究成果から(1)ルーメン微生物によるクロロフィルからのフィタン酸生成に関する限定要因が明らかとなりつつあること、(2)乳・肉に含有されるフィタン酸は機能性脂質として十分な生理活性を有することなどが明らかになった。また、(3)の課題についても、国内を流通する乳・乳製品を中心にして順調に検体数を積み増している。 以上のことから、本課題の進捗状況について、上の通りに評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度である平成29年度は、これまでの研究成果に基づき以下の計画で研究を完成させる。 (1)ルーメン微生物によるフィタン酸生成の律速段階に関する検討:本研究の最終目標であるルーメンにおけるフィタン酸生成量の調節を目標として飼料設計を考案するため、引き続きクロロフィルからのフィタン酸生成に及ぼすpH, 培地成分などの培養条件の影響を調査する。 (2)フィタン酸が免疫細胞の機能に及ぼす影響:フィタン酸、特に畜産物と同等の異性体構成を持つフィタン酸が、マウス等から調製したネイティブの免疫細胞に及ぼす影響について評価したい。 (3)国産の畜産物に含有されるフィタン酸量に関する調査:本年度も引き続き試料収集と分析を継続し、データを保管する。本年度は乳のみならず、肉製品についても調査を行うことにしている。また、これまでに得たデータの統計解析を行い、飼料構成を含めた飼養形態と最終食品におけるフィタン酸含量との関連性について解析を行う計画である。
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