研究実績の概要 |
【実績1】ストレスイベントである出生を対象に、その影響が牛の被毛中コルチゾル濃度に反映されるまでのタイムラグについて検討した。相関係数検定の結果、生後0週目の血漿コルチゾル濃度と生後1週目および2週目の被毛中コルチゾル濃度との相関係数は、それぞれ0.509(P = 0.30)および0.650(P = 0.16)となり、出生時ストレスは、生後1週目よりも2週目に採取した被毛中コルチゾルにより反映されることが明らかとなった。 【実績2】泌乳牛の被毛中コルチゾル濃度に対する産次・乳期・採毛月・地域の影響について、北海道(酪農学園大学)と神奈川県(同県畜産技術センター)のフリーストール牛舎で飼養されている搾乳牛を対象に、初産・2産・3産以上の泌乳前期(~90日)・中期(91~180日)・後期(181日~)から牛を選定して横断的に調べた。分散分析の結果、季節効果 (P < 0.001) および季節×地域の交互作用 (P < 0.05) が有意であり、6月が他の月(3, 9, 12月)よりも高値を示し、また、北海道の方が神奈川県よりも3月から6月にかけた濃度上昇の傾きが大きいことが明らかとなった。 【実績3】泌乳牛の被毛中コルチゾル濃度に影響する要因(産次・乳期・乳量・体重・ボディコンディションスコア・採毛月・毛色)について、神奈川県畜産技術センター飼養牛を対象に縦断的に調べた。重回帰分析の結果、被毛中コルチゾル濃度の分散を説明する上で、採毛月が有意に寄与しており(P<0.001)、乳量が次に寄与する傾向にあった(P=0.052)。採毛月間の比較では、6月に最高値を示し、以下、1月、3月、9月の順であった。本研究の結果は、泌乳牛の内分泌ストレス反応の指標として被毛中コルチゾル濃度を使用する際、その季節変動を考慮する必要があることを示唆している。
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