豚肉の赤身肉と霜降り肉の違いの指標となる分子マーカーとしてマイクロRNAの探索を目的とした。近年、マイクロRNAは遺伝子の発現量を調節することにより、細胞の増殖、分化、生合成ならびに代謝制御等に影響すること、また組織の種類や年齢などによって異なる発現様式を示すことなどが明らかとなってきた。食肉を構成するブタの筋肉および脂肪組織の発達における遺伝子発現の制御にマイクロRNAが影響する可能性がある。 そこで、遺伝的に赤身肉タイプまたは霜降り肉タイプの豚肉を生産することが知られている2系統のデュロック種種雄豚に由来する交雑豚の枝肉から、筋肉組織ならびに血液を採取した。そこから抽出したRNAを用いて、筋肉組織の発達に関わるマイクロRNAを同定した。その際、ブタの全マイクロRNAを網羅するアレイ解析を行った。さらにメッセンジャーRNAを網羅的に解析することができる発現遺伝子アレイ解析も行うことにより、マイクロRNAの標的候補遺伝子の発現変動についても検討した。 赤身肉タイプおよび霜降り肉タイプの豚肉の間で、筋肉組織で発現するマイクロRNAおよび血中のマイクロRNAに差異がみられるかを検討した結果、4種類のマイクロRNAを同定した。また発現遺伝子アレイ解析の結果、発現量変動が同定された遺伝子のうち6種類についてはマイクロRNAにより発現調節を受ける標的候補遺伝子であることを明らかにした。これらの結果に基づき、赤身肉および霜降り肉の形成過程において、筋肉組織中で発現する遺伝子が調節される機構を推定した。
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