研究課題
本研究では、蚊媒介性ウイルス感染症の迅速な診断法の確立、及び媒介蚊からウイルスを効率的に検出する方法を確立することを目的としている。これまでに確立した、フラビウイルス、フレボウイルス、アルファウイルスを広範囲に検出する各種one-step RT-PCR法を用いて、ザンビア共和国において採集した野外生息蚊の蚊媒介性ウイルススクリーニングを実施した。その結果、フラビウイルス属を検出するRT-PCR法により、ネッタイイエカのプールからウエストナイルウイルスの遺伝子を検出した。ウイルス陽性の蚊プールのホモジネートを用いて培養細胞によるウイルス分離を試みた結果、蚊由来C6/36細胞では細胞融合が見られ、培養上清よりウエストナイルウイルスが単離された。次世代シークエンサーおよびRACE法によりウイルス全長を同定し、系統樹解析を行った結果、南アフリカにおいて脳炎患者から検出されているLinage 2のウエストナイルウイルス株に近縁の新規株であることが判明した。本研究結果は、ウエストナイルウイルスがザンビアに存在することを初めて明らかにするものであり、ザンビアにおける熱性疾患および脳炎症例を診断する上で重要な情報である。また、蚊から遺伝子情報が不明な新規ウイルスを同定するために、次世代シークエンサーを用いて蚊から抽出したtotal RNAから効率的にRNAウイルスゲノムを検出する方法を開発した。この手法を用いて、蚊からブニヤウイルス等の新規ウイルスを同定した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに構築した検査系を用いて、野外生息蚊から臨床上重要なアルボウイルスを検出、単離するなどの成果が得られている。
これまでに構築した各ウイルスのReal-Time RT-PCRアッセイ系(Zika virus, Yellow fever virus, West Nile virus)について、Multiplex Real-time RT-PCRの至適条件を決定し、臨床検体のスクリーニングを実施する。また、高価なreal-time PCR装置を必要としないMultiplex RT-PCRの簡易検出系の開発を同時に試みる。野外蚊から抽出したRNAから、新規ウイルスを効率的に検出するために考案したウイルスゲノムの濃縮法を用いて、次世代シークエンス解析によりウイルスゲノムの同定を進める。
(理由)軽微な計画の変更により使用予定の試薬品が変更となり物品費の未使用額が生じた。(使用計画)次年度使用額は、4,5月に解析予定の物品費として使用する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Transboundary and Emerging Diseases
巻: 65 ページ: 933~938
10.1111/tbed.12888
Virus Research
巻: 18 ページ: S0168-1702
10.1016/j.virusres.2018.04.005.
http://www.czc.hokudai.ac.jp/pathobiol/