研究課題
本研究では、狂犬病ウイルスの感染機構解明を目的としてヒトsiRNAライブラリーを用いたハイスループットスクリーニングを実施し、狂犬病ウイルスの宿主細胞感染成立に関与する宿主因子を複数見出した。同定した宿主因子に、ヘパラン硫酸の生合成に関与する酵素N-deacetylase/N-sulfotransferase 1 (NDST1)が含まれていたことから、昨年度に引き続き、狂犬病ウイルス感染におけるヘパラン硫酸の機能について解析を進めた。狂犬病ウイルスCVS株の組換えGタンパク質を作出し、組換えGタンパク質とヘパラン硫酸の直接結合を表面プラズモン共鳴(SPR)により検出した。更なる解析により、狂犬病ウイルスGタンパク質とヘパラン硫酸の結合に、ヘパラン硫酸のN-硫酸基、2O-硫酸基修飾が重要であることが明らかとなった。狂犬病ウイルスCVS株はヘパラン硫酸と相互作用するが、HEP株はその作用が認められなかったことから、両株のGタンパク質のキメラ体を作出し、ヘパラン硫酸との結合に重要なGタンパク質領域の絞り込みを行い、158/186/248位のアミノ酸を同定した。次に、158/186/248位に変異を導入することにより、ヘパラン硫酸との結合力を付与した組換えHEP株を作出した。本ウイルスをマウスに接種し、病原性の変化を観察したが、親株と比較して臨床症状、組織中のウイルス量に変化は認められなかった。従って、ヘパラン硫酸との結合が狂犬病ウイルスの病原性へどのような影響を与えるか、今後も研究が必要である。狂犬病ウイルスとヘパラン硫酸の相互作用解析について、一連の研究成果をまとめた論文を発表した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
The Journal of Infectious Diseases
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http://www.czc.hokudai.ac.jp/pathobiol/