研究課題/領域番号 |
15K07717
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
有川 二郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10142704)
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研究分担者 |
土佐 紀子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20312415)
高倉 彰 公益財団法人実験動物中央研究所, その他部局等, 研究員 (60167484)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イムノクロマト / 実験動物 / 微生物モニタリング / 人獣共通感染症 / 血清診断 / SPF / マウス / ラット |
研究実績の概要 |
近年の遺伝子改変動物(Tg, KOマウス、ラット)使用実験の爆発的増加により、実験動物の感染症予防における獣医学的管理の重要性がますます高まっている。それに伴い実験動物の微生物統御方法の問題点が明らかになってきている。すなわち、少数多系統の遺伝子改変動物の微生物統御が必要となった。また、マイクロアイソレーター飼育により、従来の「おとり動物」を検査することでは該当系統の動物の感染の有無を検出することができなくなった。このため、安楽死させることなく、対象動物の個体毎に「抗体検査」する微量全血・高感度診断法の開発が必要である。本研究では、微量全血を用いてマウスおよびラット等の実験動物の主要感染症を同時に検査出来る「多項目(マルチプレックス)イムノクロマト法」の開発と実用化を目的として初年度(平成27年度)においてはラット血清を対象として以下の研究を実施した。 1.ラットの感染症として腎症候性出血熱、センダイウイルス感染症、ティザー病、マイコプラズマ感染症、唾液性涙腺炎ウイルス感染症を選択し、それぞれの病原体に対する免疫血清を準備した。2 上記感染症病原体の組換え抗原もしくは固定ウイルス粒子を準備した。3. ラットIgG検出のために、抗ラットIgG ウサギ抗体標識金コロイド粒子を用いた。 4. 上記抗原、免疫血清および金コロイド粒子を用いて、ラットIgG検出イムノクロマト法テストストリップを作成した。5.使用抗原濃度、金コロイド粒子濃度の調整を行い、上記疾患それぞれの陽性コントロール血清において、抗体を検出出来る事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎症候性出血熱(HFRS)、センダイウイルス感染症(HVJ)、ティザー病(Tyzzer)、マイコプラズマ感染症(Myco)、唾液腺涙腺炎ウイルス感染症(SDAV)の5種類のラット主要感染症を対象疾患とした。HFRSの抗原は組換えNP抗原を使用した。HFRS以外の各感染症の抗原および陽性血清は、実験動物中央研究所にて作製しELISAキットで使用されているものを用いた。ICG法におけるラットIgG抗体の検出担体には抗ラットIgG抗体(Sigma)標識金コロイド粒子(WRGH2、ワインレッドケミカル)を使用し、各陽性血清を50倍、100倍、200倍、および各抗原を1倍、10倍、100倍まで3段階に希釈しイムノクロマト法を実施した。 各感染症の陽性血清を200倍希釈でスクリーニングしたところ、、HFRSで1mg/ml 、HVJでは0.5mg/ml、Tyzzerでは0.6mg/ml、Mycoでは0.1mg/ml、SDAVでは1mg/mlの抗原濃度において、コントロールラインと同程度の強さの反応が得られた。一方、同じ希釈倍率の正常ラット血清ではいずれの抗原においても反応は認められなかった。 以上のように、ラット感染症に対する免疫血清と自然感染血清、並びに診断抗原を準備することができた。さらにこれらの血清と抗原を用いてラット血清を対象とするイムノクロマト法のテストストリップを開発できたことから、平成27年度の研究実施計画にそって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ラットの主要感染症の診断については、多数検体を用いた感度・特異性の検討ならびに既存のELISA法との感度の比較を行う。さらに、単一のICG上に5種類の抗原を塗布する多項目ICG法の開発を進める。平成28年度からは、マウスの主要感染症を対象とするイムノクロマト法の開発研究について以下の研究を実施する。 1. マウスの感染症としてリンパ球性脈絡髄膜炎、センダイウイルス感染症、ティザー病、マイコプラズマ感染症、マウス肝炎を選択し、それぞれの病原体に対する免疫血清を準備する。 2. 上記感染症病原体の組換え抗原もしくは固定ウイルス粒子を準備する。3. マウスIgG検出のために、抗マウスIgG ウサギ抗体標識金コロイド粒子とプロテインA標識金コロイド粒子に関して検討する。4. 上記抗原、免疫血清および金コロイド粒子を用いて、マウスIgG検出イムノクロマト法テストストリップを作成する。 5.使用抗原濃度、金コロイド粒子濃度の調整を行い、上記疾患それぞれの陽性コントロール血清において、抗体を検出出来る事を確認する。7.多数検体を用いた感度・特異性を検討する。8. 既存のELISA法との感度の比較を行う。9. 単一のICG上に5種類の抗原を塗布する多項目ICG法の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラット血清を対象とするテストストリップの検定のためには、免疫血清と自然感染動物の血清を用いて反応を解析することが必要である。平成27年度は必要最小限の数の血清を用いて、テストストリップの検定を行った。しかし、感度および特異性の検定には、より多数の免疫血清や自然感染動物血清を用いることが必要である。しかし、平成27年度は、免疫血清の作成や自然感染動物血清の収集の準備が間に合わなかったことから、平成27年度中に実施することが出来なかっため、物品費等の使用額が当初予定より少なかったため、予算の執行が見積もり通りに完了しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
速やかに免疫血清の作成に取りかかる。また、自然感染血清の収集のため、関連疾病の動物における実際の捕獲調査や研究グループへ依頼する等して血清の収集につとめる。感度、特異性検定のため、テストストリップを多数作成する。そのため、実験用動物の購入、飼育代、捕獲調査等のために旅費等また、テストストリップ作成のために試薬代が必要になる。
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