研究課題
本研究は、家畜のウイルス性下痢症の原因究明を目的として、糞便中の新規ウイルスやこれまでに明らかになっていないウイルスコミュニティーの解明をメタゲノム解析により行っている。平成27年度には新種のピコルナウイルスおよびトロウイルスの異種間遺伝子組み換えを発見し、平成28年度には詳細の明らかになっていない豚のポサウイルスの疫学解析、全遺伝子の解読がなされていなかった牛B群ロタウイルスの全遺伝子解析、豚アストロウイルスの遺伝子組み換えの解析を行った。平成29年度は、豚に下痢を起こす報告のある豚コブウイルスが多数検出されたことから詳細な遺伝子解析を実施した。その結果、下痢との関連は不明であったが、豚アストロウイルス同様の様々な遺伝子組み換えが起こっていることが明らかになり、組み換えによって生じた遺伝子の多様性が豚群中で存続していく上で有利に働いていることが示唆された。また、人の下痢症の原因ウイルスの一つであるサポウイルスが広く豚の糞便から検出され、人のサポウイルスとは遺伝子が異なるが、豚群中には多くの遺伝子型があることを確認した。さらに豚の糞便で普通に確認される豚エンテロウイルスにトロウイルスの遺伝子の一部が組み込まれた株が多数浸潤していることを発見した。このトロウイルスの遺伝子は下痢原性に関わる可能性が示唆されているが、我が国の多くの健康豚の糞便からも検出された。そこで今後、監視を続けていく必要があると考えられた。ウイルスの遺伝子組み換えや異種間伝播はウイルスの下痢原性の変化に結びつく可能性が示唆されたことから、今後は野生動物と家畜のウイルス伝播に研究対象をシフトし、メタゲノム解析を継続していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)
PLOS ONE
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