H28年度に作出した狂犬病生ワクチン候補株のERA-G333LeuCO株は、逆変異しにくい弱毒変異LeuをG蛋白質333位に保有するため、高度かつ安定な弱毒性状を持つと予想される。また、G遺伝子のコドンが哺乳類細胞に最適化されているため、通常のウイルスよりも高いレベルのG蛋白質を発現すると推定される。すなわち、ERA-G333LeuCO株は、安全性かつ免疫効果の高い生ワクチン株として期待される。H29年度は、本株の安全性および免疫効果について、具体的な検討を行なった。その結果、マウス感染実験(脳内接種)により、ERA-G333LeuCO株は、コドン最適化を行なっていないERA-G333Leu株と同様、高度に弱毒化していることが確認された。一方、神経系培養細胞に両株を感染させた場合でも、G蛋白質の発現量に顕著な差は見られなかった。両株のG蛋白質をプラスミドから発現した場合では、ERA-G333LeuCO株のG蛋白質の発現量が約6倍高くなることが確認されているため、感染細胞では何らかの理由によりコドン最適化の効果が得られないと考えられた。また、ERA-G333LeuCO株およびERA-G333Leu株の感染防御能についても比較した。両株を免疫したマウスに攻撃試験用の標準株(CVS株)を接種したところ、ERA-G333LeuCO株を免疫したマウスの生存率がわずかに高い傾向が認められた。しかし、両株免疫マウスの生存率の間に統計学的な有意差は確認できなかった。 さらにH29年度は、ERA-G333Leu株の弱毒性状の安定性をさらに高める目的で、N蛋白質273および394位に弱毒変異を併せ持つERA-N273/394-G333Leu株の作出に成功した。現在、その弱毒性状について詳細な検討を行っている。
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