研究実績の概要 |
クドア食中毒は生鮮海産魚喫食後4-19 (平均5)時間後に下痢や嘔吐を主徴として発症する人体疾患である。下痢の発症には、消化管上皮に接着した胞子から放出された原形質体細胞が上皮を貫通し破壊することが機序として推測されるが、発症までの経過が極めて迅速である点を科学的に説明する必要がある。そこで、日常的な生鮮魚喫食によってクドアに対して免疫感作受けた人が閾値以上のクドア胞子を摂食することで、広汎な上皮破壊が誘導され、迅速な発症を引き起こしている可能性が考えられる。実験モデルを用いた実証的な観察を計画し、実験に用いるクドア胞子の入手先を確保するために国内で入手できる生鮮海産魚について網羅的探索を進めた。この調査研究のなかで、既知12種 (K.iwatai, K.trachuri, K.musculoliquefaciens, K.septempunctata, K.thyrsites, K.shiomitsui, K.whippsi, K.hexapunctata, K.neothunnni, K.thunni, K.thalassomi, K.igami)、および5新種 (K.pleurogrammi, K.parathyrsite, K.akihiotoi, K.empressmichikoae, K.konishiae)の感染状況を記録した。今回の研究で確認された種を含め、日本で市販される海産魚からはKusoa属粘液胞子虫26種がこれまでに報告されたことになる。最終的に、宮古島周辺海域で水揚げされたテングハギからのK. thalassomi、タイワンブダイ、ツユベラ、シロタスキベラでのKudoa igami寄生は重度であり、安定して多くの胞子を確保できる天然魚を特定できた。なお、Kudoa粘液胞子虫の生活環は未解明で、実験室で寄生虫を維持して実験に供することはできない。
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