| 研究課題/領域番号 |
15K07729
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| 研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
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研究代表者 |
落合 由嗣 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (40350178)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | リステリア / 過酸化水素 / 酸 / 温度 / ストレス |
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| 研究実績の概要 |
本研究では、室温・冷蔵温度環境で発育させたリステリアによって発現されるストレス抵抗性、増殖性、病原性の表現型を解析し、温度条件によって異なって発現される表現型がどのようなメカニズムによるか、明らかにすることを目的とする。平成27年度には20℃または37℃で発育後、様々な温度条件でストレスに暴露されたリステリアのストレス抵抗性を解析した。ストレスとして過酸化水素と酸（pH2.5）に暴露した。生残性および増殖性の解析とともににストレスで誘導される因子が温度条件間で異なるかを解析した。
過酸化水素への暴露実験では、抵抗性は暴露温度依存的で、低温（20℃）で高くなることが示された一方、発育温度の抵抗性への影響は低いと考えられた。20℃あるいは37℃で過酸化水素添加培地における菌の増殖曲線を作成したところ、いずれも温度条件でも同じ過酸化水素の濃度以下で増殖が観察された。また、増殖可能な過酸化水素濃度における増殖の特徴として、過酸化水素の濃度に依存して誘導期の長さの変化が観察された一方、増殖率および静止期における培養液の濁度に関しては異なる濃度間で顕著な違いはみられなかった。ストレスに関連する因子の転写レベルにおける発現解析の結果、37℃で発育・暴露された菌では、ストレス暴露に応答する因子の発現調節において中心的な役割を担う遺伝子や過酸化水素分解酵素のカタラーゼをコードする遺伝子の誘導が観察された。20℃ではこれら遺伝子の明確な誘導はみられなかった一方、鉄と結合するフェリチンをコードする遺伝子などの誘導が観察された。
酸に対する暴露実験でも、酸暴露抵抗性は暴露温度に依存的で、低温（20℃）で高くなることが示された。酸性の条件下で増殖曲線を作成したところ、20℃・37℃の条件で同一のpH以下で増殖が観察されなくなることがわかった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には、リステリアの標準株として用いられているEGD-e株および食品由来株を用いて、ストレス抵抗性の解析およびストレス暴露によって誘導される因子の解析を計画していた。EGD-e株に関しては、過酸化水素および酸への抵抗性の解析を予定通り進めることができた。特に過酸化水素抵抗性に関しては、ストレス誘導因子が温度条件によって異なると言う知見を得ることができた。この知見は本研究課題で設定した仮説を支持するものであるため、今後も当初の研究計画通り進めていく方針である。
その一方で、食品由来株の解析に関しては、平成27年度に行うことができなかった。また、冷蔵温度条件におけるストレス抵抗性の解析に関しても実施することができなかった。この原因は、EGD-e株のストレス抵抗性の解析実験の条件設定に対し、当初の計画よりも時間を要してしまったことに起因する。しかしストレス抵抗性実験の条件について平成27年度に確立させることができたので、今後、この実験系を用いた研究については贈れることなく進めていくことが可能性になったものと考えている。
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| 今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り進めることは、酸暴露下において誘導されるストレス関連因子の解析である。すなわち、酸に対するストレス抵抗性の解析においても温度依存的な抵抗性が観察され、低い温度で抵抗性が高くなる知見が得られた。このことから、温度間でストレスによって誘導される因子に違いのことが考えられるため、リアルタイムRT-PCR法を用いた解析を行うことを計画している。
また平成27年度の実施を計画していた研究である、食品由来株のストレス抵抗性解析を平成28年度に実施する。EGD-e株と同様に過酸化水素および酸に暴露して抵抗性を解析する。さらに冷蔵温度条件におけるストレス抵抗性の解析も実施することを計画している。
平成27年度には、20℃の温度条件でのみ、リステリアの過酸化水素に対する暴露で、鉄と結合するフェリチンをコードする遺伝子が誘導されている知見が得られた。以上から、過酸化水素抵抗性が温度依存的に変化することに鉄が関与していることが示唆された。当初の研究計画では、鉄が菌の過酸化水素抵抗性にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることは考えていなかった。しかし本研究の目的である、食品加工環境に生息するリステリアを効果的に排除する基盤構築することにおいて、鉄と過酸化水素抵抗性との関連を明らかにすることは必要と考えれらたため、研究計画を変更して平成28年度に実施する。具体的な研究計画として、過酸化水素暴露液に鉄あるいは鉄キレート剤を添加した条件におけるストレス抵抗性の解析、およびストレス関連因子の発現が鉄や鉄キレート剤の影響を受けるかの解析を計画している。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に行うことを計画していた研究の一部、すなわち、食品由来株のストレス抵抗性の解析、および冷蔵温度条件におけるストレス抵抗性の解析を実施できなかったことが原因で、次年度使用額が生じた。
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| 次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に実施できなかった研究については平成28年度に実施することを計画している。加えて、当初の研究計画になかった研究を平成28年度に加えて実施することも計画している。以上の研究に対して使用することを計画している。
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