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2015 年度 実施状況報告書

SAA遺伝子変異に起因するAAアミロイド症の病理発生機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K07730
研究機関麻布大学

研究代表者

上家 潤一  麻布大学, 獣医学部, 准教授 (10400269)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードAAアミロイド症 / SAA / 質量分析
研究実績の概要

2015年度は豚のアミロイド症症例の解析を優先的に実施した。希少な疾患であるアミロイド症罹患豚を5例(国内3例、アメリカ2例)見出し、沈着アミロイドを構成するSAAのアミノ酸配列を質量分析で明らかにした。解析した5例全てのアミロイド抽出物中に、野生型SAA2およびN末端に変異を有するSAA2変異体が検出された。野生型および変異体SAA2に特異的なPCRでゲノムDNAを解析したところ、罹患豚全てにおいて両遺伝子が検出された。次に2種類のSAA2のアミロイド形成能を明らかにするために、SAA2および変異体のN末端のペプチドを合成し酸性溶液中で反応させたところ、変異体ペプチドは幅10nmの直鎖状アミロイド線維を形成し、野生型SAA2ペプチドは幅5nmの分岐する線維を形成した。変異体ペプチドが形成したアミロイド線維を超音波破砕したものを野生型SAA2ペプチド溶液に加えたところ、変異体ペプチドと同様の直鎖状アミロイド線維を形成した。異常の結果は、豚のAAアミロイド症の発生には野生型、変異型SAA2が関与しており、高いアミロイド原性を示す変異型SAA2がアミロイド形成に重要であることが示唆された。
豚で見出した変異型SAA2はN末端に変異があることから、SAAのN末端がアミロイド形成に重要と考えられる。哺乳類間ではSAAは高い相同性が保持さえているが、N末端には種差が認められる。そこで、各動物(牛、犬、猫、ヒト)のN末端ペプチドを合成し、酸性溶液中でのアミロイド線維形成を観察した。豚変異体と同様なアミロイド線維を形成したペプチドは牛のみであり、他動物のN末端ペプチドはアミロイド線維を形成しなかった。この結果は犬、猫、ヒトでは①N末端以外の部位がアミロイド線維形成に重要、②豚同様にN末端変異型SAAが関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

過去に2症例のみ報告されている豚のAAアミロイド症を5例見出し、その全ての症例で共通した2種類のSAAが沈着していることを明らかにした。ゲノムDNAの解析で変異体をコードする遺伝子が同定されている。また合成ペプチドを用いたアミロイド線維形成にも成功しており、申請書記載の本年度の研究内容を全て達成している。

今後の研究の推進方策

豚で明らかにした知見をもとに、犬、猫におけるアミロイド形成機序を明らかにする。豚の解析で確立した手法を用いて、AAアミロイド症罹患犬、猫のパラフィンブロック試料から沈着SAAのアミノ酸配列を明らかにする。明らかにした配列をもとにペプチドを合成し、in vitroでアミロイド線維形成能を確認する。高いアミロイド線維形成能を有するSAAを同定できた場合、リコンビナントタンパク質を作成し、マウスに接種することでアミロイド惹起を確認する。

次年度使用額が生じた理由

ペプチド発現実験が効率よく実施され、試薬代を節約することができたため。

次年度使用額の使用計画

次年度以降は検体数の多い犬、猫を解析することから、質量分析の実施回数の増加が予想されることから、質量分析関連試薬代として使用する。

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公開日: 2017-01-06  

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