研究課題/領域番号 |
15K07735
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
南保 泰雄 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20731623)
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研究分担者 |
羽田 真悟 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40553441)
滄木 孝弘 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40624721)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 馬 / 妊娠 / 超音波画像検査 / 胎盤 / 子宮 / 流産 / 重輓馬 |
研究実績の概要 |
馬の流産,早産などによる妊娠喪失の原因のひとつとして「上行性胎盤炎」が挙げられる。本研究は、妊娠重輓馬に対する妊娠検査方法を確立するとともに、超音波画像検査による胎盤炎評価法の検討を実施した。 その結果、妊娠重輓馬の子宮胎盤厚は、これまでの報告と同様に、妊娠の進行とともに増加することが明らかとなった。一方、世界最大級の重量をもつ重輓馬繁殖用雌馬の子宮胎盤厚は、これまで軽種馬で報告されている値よりも2倍程度高いことが明らかとなった。重輓馬の子宮胎盤厚は、異常群と正常群において統計的な差は認められなかったものの、妊娠10カ月および11ヵ月における子宮胎盤厚15mm以上を示した割合は、異常群のほうが多い傾向を示した。また、子宮胎盤厚測定時に観察される子宮と胎盤の境界部分が明瞭化する割合は、妊娠の進行とともに割合が増加した。さらに、2層化の観察される割合は、正常群よりも異常群において高かった。 加えて、大型の馬の調査研究を学部学生、大学院生とともに定期的に進めることは、産業動物臨床獣医学教育への貢献や、世界に比肩した獣医学教育の構築、さらには地域社会産業への貢献として、本研究が側面的に利用されていることも注目すべき実績と考えられる(図書、備考欄参照)。 以上の結果から、これまで有効な方法が実施されていなかった重輓馬の妊娠異常を検査する手段として、子宮胎盤厚の測定は簡便で有用性の高い検査となりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体重1000kgを超える重輓馬に対して、妊娠の有無のみならず、子宮胎盤厚の生理学的な変化、あるいは異常症例における胎盤炎の診断など、これまで正確に報告されていない所見に対して、直腸壁を介した超音波画像診断装置による診断法を確立しつつある点では、概ね順調に推移している。一方、腹部からの描出や、3Dエコーによる診断、描出技術については、検討症例数が少数であり、十分な成績が得られていない状況にある。また、現在画像診断を並行して採取している血清サンプルについて、プロジェステロン、エストラジオールを測定し、重輓馬の妊娠期における標準値の作出および異常例との相違について検討中である。申請者が並行して解析している軽種馬における異常妊娠例の診断にホルモン測定が有用であることが明らかとなったことから、今後重輓馬の診断法確立に向けて、異常症例の材料採取を継続して進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたるH29年度は、引き続き症例数を増加させることに加え、未解析部分にあたる世界最大級の馬に対する新しい画像診断法の確立に向けてさらに検討が必要である。また、研究材料を採取する中で、例年10-20%程度に認められると考えられた妊娠異常例が、現在研究協力を得ている牧場では3-5%と極めて少なく、思いのほか異常症例の材料採取に苦慮している状況にある。H29年度も継続して本研究を進めるとともに、まとめの年度として、妊娠全期間にわたる重輓馬の妊娠診断方法の確立を目指す所存である。さらに、本研究は、世界中で飼養されているペルシュロン、ベルジアン、クライズデールといった大型種馬への生産獣医療や、大型動物に対する妊娠診断法の開発に対して、極めて有用な知見を提供できる成果と捉えることができることから、得られた成果を内外に報告するとともに、日本から発信できる馬獣医科学情報となるように更なる誌上報告を目指したい。併せて、世界で唯一の競馬として知られる、ばんえい競馬に貢献できるように、本研究の成果を地域産業に活用できるような活動や枠組みづくりを積極的に進める必要がある。
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