研究課題
今年度は,脂肪酸の測定系を安定化する目的で,サンプルが集まるまでの間,ホルスタイン種経産牛30頭の血清脂肪酸濃度を測定した。30頭の内訳は,健常牛10頭,炎症性疾患牛11頭,代謝性疾患牛9頭で,その血清は,脂質抽出(Bligh法)および薄層クロマトグラフィーで処理を行い,脂質をステロールエステル(SE),トリグリセリド(TG),遊離脂肪酸(FA),リン脂質(PL)に分離した。そして,ガスクロマトグラフィーにより脂肪酸濃度を測定した。炎症性疾患牛の脂肪酸濃度では,PLのC17:0における高値,FA分画のC16:0における低値がみられた。SEのC18:1(c-11)における高値,FAのC15:0,C16:0,C18:1(c-9),C20:0,C22:0,C24:0,PLのC12:0,C16:0,C22:0,C20:5(n-3)における低値がみられた。代謝性疾患牛の脂肪酸濃度では,SEのC18:2(c9,c12),PLの総不飽和脂肪酸における高値,FAのC12:0における低値がみられた。これらの結果から,炎症性疾患牛ではFAのC16:0濃度が特異的に減少する可能性が示唆された。代謝性疾患牛ではPLの不飽和脂肪酸濃度が上昇することが示唆された。疾患との詳細な関連性はさらに検討する必要である。また,過剰排卵処置を施した黒毛和種牛60頭から採胚を実施した。胚の品質を記録し,Photoshopの輝度ヒストグラム簡易測定法によって,個々の胚の輝度を測定した。ウシの血液を取り,血清分離し血液生化学測定,残りの血清の脂肪酸測定を現在行っており,採胚成績の関係ならびに胚の輝度との関係のデータ解析を行っている。
3: やや遅れている
年度当初に以前の研究室の測定系を現在の研究室でも実施できる体制を整えたが,脂肪酸の測定系を安定させるために時間を要した。また,昨年度途中で,同じ研究室の教員が他大学に移籍したことにより,授業等のエフォートが上昇したため,研究に割く時間がほとんどなくなった。それらの理由により,若干計画が遅れている。
今年度から,同研究室に後任の教授が入ったため,若干,講義と実習の負担は軽減されるものの,東京農工大学との共同獣医の授業で実習負担がかなり増加する予定であり,研究計画の見直しを行っている。平成27年度に終了予定であった「胚の品質(輝度)と血中脂肪酸濃度の関係」についてはサンプリングがすでに終了し,平成28年度中に胚の輝度の測定と脂肪酸の測定を実施し,データを解析する。また,平成28年度行う予定の「周産期経産乳牛におけるバイパス脂肪酸投与が卵子品質・胚発生能力に与える影響」についても,サンプリングを行い,測定解析を進める。
脂肪酸の測定準備等で実験計画が若干遅れたためである。それにより,発表等の旅費も予算を下回った。
主に今年度の脂肪酸測定などの消耗品購入に充填して使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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