研究課題/領域番号 |
15K07738
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
高橋 正弘 岩手大学, 農学部, 准教授 (50582334)
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研究分担者 |
山本 公平 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20364028)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウシ / 繁殖性 / バイパス不飽和脂肪酸 / 卵子 / 胚 / 脂肪酸分析 |
研究実績の概要 |
今年度は,バイパス多価不飽和脂肪酸(PUFA)投与が経腟採卵により採取したウシ卵子の脂肪酸濃度ならびに輝度に与える影響について調査した.ウシにおいて,バイパスPUFAの投与による繁殖機能や体外発生胚への影響は過去に多く報告されているが,卵子自体の脂肪酸測定は行われていない.本研究では生体から採取した卵子の脂肪酸および輝度測定を行った. ホルスタイン種牛6頭にバイパスPUFAとしてトマリノール(日清丸紅飼料(株))を与え,非投与日(対照群)から約1週間おきに経腟採卵(OPU)を行った.卵子のデジタル画像を記録し,Adobe Photoshop CS5.1を用いた輝度ヒストグラム簡易測定法にて,個々の卵子の輝度を測定した.輝度測定後の卵子と血漿から脂肪酸抽出を行った. 卵子輝度は対照群にあたる0週目から4週目に至るまで有意な変化は認められなかった.卵子脂肪酸濃度は,遊離脂肪酸(FA),リン脂質(PL),ステロールエステル(SE)およびトリグリセリド(TG)分画全てにおいて経時的な変化は認められず,全期間において飽和脂肪酸であるパルミチン酸とステアリン酸が高値を示した.一方で,血漿脂肪酸濃度はPL分画にてオレイン酸とリノール酸,SE分画にてリノール酸およびTG分画にてオレイン酸の濃度の上昇が確認された. 血漿脂肪酸濃度がバイパスPUFAの投与によって上昇したのに対し,卵子脂肪酸は同様の傾向を示さなかった.ウシの生体内では,過剰な脂肪酸は卵子に蓄積されないように調整されている可能性が考えられる.現在では卵子のランク分類は卵丘細胞の状態により判断されている.輝度測定は卵細胞質の状態のみに特化していることから単独で品質判断に用いるには適さないが,卵細胞質の客観的指標の一つとして他の分類方法と組み合わせられる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の研究室内で脂肪酸を測定できる体制は出来ている。学部学生の卒業研究も兼ねて実施しており,昨年度は順調に採材,測定ならびに解析を行うことができたが,初年度の遅れの影響は残っている。繁殖障害牛におけるバイパス脂肪酸投与が卵子品質・胚発生能力に与える影響については,時間的に不足し実施することが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
「胚の品質(輝度)と血中脂肪酸濃度の関係」についてはサンプリングを実施し,今現在,胚の輝度の測定と脂肪酸濃度の測定を実施し,データ解析を行った。「経産乳牛におけるバイパス脂肪酸投与が卵子品質・胚発生能力に与える影響」について,サンプリングならびに測定を実施した。今年度は学会発表ならびに論文投稿に注力し,研究成果の公表に力を入れる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表ならびに論文投稿の遅れで繰越金が残った。今年度は,主に学会発表旅費と論文投稿料に使用する予定である。
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