ホルスタイン種経産牛30頭(健常牛10頭,炎症性疾患牛11頭,代謝性疾患牛9頭)の血清脂肪酸濃度を測定した.脂質抽出(Bligh法)および薄層クロマトグラフィーで処理を行い,脂質をステロールエステル(SE),トリグリセリド(TG),遊離脂肪酸(FA),リン脂質(PL)に分離し,ガスクロマトグラフィーにより脂肪酸濃度を測定した.炎症性疾患牛ではFAのC16:0濃度が減少し,代謝性疾患牛ではPLの不飽和脂肪酸濃度が上昇することが示唆された. 牛胚の輝度について定量的測定を検討し,採胚成績との関連性について調査した.黒毛和種牛46頭ならびにホルスタイン種牛8頭に対して過剰排卵処置を施し採胚を行った.また,採胚日に尾動静脈より採血し,採胚成績を記録し,胚のデジタル画像を撮影した.黒毛和種牛はホルスタイン種牛に比べて胚の輝度が有意に高かった.黒毛和種牛における胚の輝度は季節間(夏>秋>冬)で有意差が見られた.胚の輝度を定量的に測定することにより,客観的に評価することが可能であった. バイパス多価不飽和脂肪酸(PUFA)投与が,経腟採卵により採取した牛卵子の脂肪酸濃度ならびに輝度に与える影響について調査した.ホルスタイン種牛6頭にPUFAとしてトマリノール(日清丸紅飼料(株))を与え,非投与日から約1週間おきに経腟採卵(OPU)を行った.卵子の輝度ならびに脂肪酸濃度は,0週目から4週目に至るまで有意な変化は認められなかった.一方で,血漿脂肪酸濃度はPL分画にてオレイン酸とリノール酸,SE分画にてリノール酸およびTG分画にてオレイン酸の濃度の上昇が確認された.血漿脂肪酸濃度がPUFAの投与によって上昇したのに対し,卵子脂肪酸は同様の動きを示さなかった.
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