研究課題/領域番号 |
15K07739
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山崎 真大 岩手大学, 農学部, 教授 (40322846)
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研究分担者 |
今井 正樹 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (30333363)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Babesia gibsoni / ジミナゼン / 薬剤耐性 / クローン化 / 次世代シークエンス |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、ジミナゼン耐性Babesia(B.) gibsoni株の作成を行い、結果として50 ng/mLのジミナゼン存在下でも生存可能なB. gibsoni株の作成に成功した。この株の性質を調べたところ、以前作成した耐性株と同じく、熱ショック蛋白質90の発現量が減少していたことから、同じ性質であると推測した。よってジミナゼン耐性B. gibsoni株の作成に成功したと判断した。 また、対照とすべく、ジミナゼン感受性株を野生株より限界希釈法を用いて分離し、クローン化を行った。その上でこれらジミナゼン感受性株および野生株に対するジミナゼンの50%阻害濃度(IC50)を測定した。この結果、感受性株はIC50が45.6 ng/mLであり、耐性株では2047.3 ng/mLと約45倍に顕著な上昇が認められた。よってジミナゼン耐性株はジミナゼンに対する耐性を獲得していることが確認出来た。 さらに、B. gibsoniのゲノム情報については一度学会での報告があるものの、データベース上に利用できるデータがほとんど存在しなかったことから、感受性株と野生株の遺伝子発現量を比較するための基礎データを取得する目的で、ジミナゼン感受性株より抽出したゲノムDNAを鋳型として、次世代シークエンスを用いたB. gibsoniのゲノム解析を実施した。ジミナゼン感受性株を大量に培養し、十分な量のゲノムDNAを調整した上で解析を実施した。本実験については、約3,000の遺伝子配列が解析され、現在データを解析中であるが、1度の解析では全ゲノムを解析できなかったことから、再度解析を追加で実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目はジミナゼン耐性株の作成に苦労し、研究に若干の遅れが認められたものの、ジミナゼン耐性株の作成が達成され、今後は研究の速やかな進行が期待できる。 本研究課題は、表題としてB. gibsoniの遺伝子発現量解析のためにマイクロアレイを利用することを考えて計画を立案したが、近年の研究技術の発展により、より適した解析手法として次世代シークエンスを用いた研究の方が良いと思われたため、この技術を用いて研究を実施している。次世代シークエンスを用いる利点として、研究の一環として非常に簡便にB. gibsoniの全ゲノムの解析に挑戦することができ、これを基礎データとして遺伝子発現量の変化も解析することが可能であり、本研究課題以外の研究に対しても多くの情報を提供できることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、ジミナゼン耐性B. gibsoni株の作成に成功したことから、今後はこの株を用いて遺伝子を解析していく予定である。 しかしながら、ジミナゼン耐性株は野生株、およびジミナゼン感受性株に比較して増殖が弱く、DNAあるいはRNAを抽出するにあたり、耐性株においては感受性株よりもより大きなボリュームで培養する必要があり、サンプルの調整が若干困難である可能性がある。このため、完成したジミナゼン耐性株に関しては、ジミナゼンが存在しない状況でもその性質は感受性に戻らないことが確認されていることから、サンプル調整時にはジミナゼンが存在しない状況で培養を行う予定である。 研究の流れとしては全ゲノム解析を先行して実施し、こちらが終わり次第、次にRNAを鋳型として遺伝子発現量の比較を実施する予定である。この遺伝子発現量の解析により、発現量がジミナゼン感受性株と耐性株の間で異なる遺伝子が見つかった場合には、リアルタイムPCRや免疫学的手法を用いて遺伝子発現量の変化について詳細な解析を実施する予定である。
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