研究実績の概要 |
ストレスはバイオロジカルリズムを破綻させ、免疫力や運動能力に影響を及ぼし、疾患リスクを増大させる。しかし、ストレスの客観的に評価する方法は確立されておらず、ストレス体内時計、健康、疾患との関係は科学的に解明されていない。本研究では、マウスのおいてストレス性リズム障害を再現し、その分子病態メカニズムを解析するとともに、簡便かつ低侵襲な唾液中のバイオマーカーの変動を詳細に解析する。また、そこから見出されたバイオマーカーを他の動物種に適応できるか否かの検討を行う。ストレスー体内時計ー疾患の相互関係を明らかとし、動物種の垣根を超えて使用できる新規なバイオマーカーの確立をめざす。 本年度は、新世界ザルのリスザル(Saimiri boliviensis;昼行性)およびヨザル(Aotus lemurinus;夜行性)において、in vivoでサーカディアンリズム(活動リズムと体温リズム)を継続的に記録し、4時間おき6ポイント(ZT1,5,9,13,17,21)で唾液中のコルチゾールおよびメラトニン濃度をそれぞれ測定した。コルチゾールについては、唾液中でも明確な日内変動を示し、昼行性のリスザルと夜行性のヨザルで、逆位相になることが確認された。またリスザルおよびヨザルにおける時計遺伝子(Per1,Per2,Per3)のクローニングに着手し、ヨザルの時計遺伝子の部分配列を決定した。ヨザルについては、この部分配列を利用し、数本のヒゲ(無麻酔下)から時計遺伝子の変動をモニターすることに成功した。次年度は、ヨザルやリスザルにおいて、時差ボケモデルでの評価や給餌性ストレスの評価を実施し、マウスにおける同評価結果との比較を行う予定である。
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