研究課題/領域番号 |
15K07745
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岩田 祐之 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (40193750)
|
研究分担者 |
前田 健 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (90284273)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 急性期蛋白 / ウシ / プロカルシトニン / α1酸性糖蛋白 / モノクローナル抗体 |
研究実績の概要 |
難治性病態における急性期蛋白変動の疾患特性と糖鎖変調の解明を目的として、本年度は以下の基礎的事項を中心に検討した。 1. ウシα1酸性糖蛋白に対するモノクローナル抗体(MAb) の検討:ウシ血清から精製したAGPおよび組換え蛋白を抗原として作製したMAbは主に成熟AGPのC末端側(168-202aa)を認識し、ELISA法およびImmunoblot法により血清および組換えAGPの両方を認識するものであった。本MAbは抗原決定基の検索および免疫吸着による微量精製法に供するために精製した。 2. ウシプロカルシトニン(PCT)の組換え蛋白発現とMAbの作製:ウシPCTについては遺伝子合成によりcDNAを作出した。このcDNAをpET 32ベクターに挿入し、大腸菌組換え蛋白をチオレドキシン融合蛋白として作製し、精製した。精製組換え融合蛋白を抗原としてマウスを免疫して、MAbまたはポリクローナル抗体を得た。2つのMAbが得られ、ELISA法およびImmunoblot法で組換え蛋白を認識した。 3. マウスAGPのELISA法と糖鎖構造解析の確立:マウスAGPに対するMAbについては抗原決定基の異なる2種類のクローンが得られ、biotin化MAbを作製し、ELISA定量法を確立した。LPS投与マウスに応用したところ、血清AGPは1.5倍に上昇し、レクチンプルダウン解析の結果いずれも分子量のより大きな複雑な糖鎖を有するAGPが認められた。 4. マウスAGPのN型糖鎖修飾が細胞外分泌に与える影響:5つの糖鎖を各種欠失させたAGP変異体を作出して細胞外分泌について検討したところ、N104位に付加される糖鎖には、分子の細胞外放出を促進する働きがあることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスAGPについてはほぼ順調に推移しているが、ウシAGPについてはモノクローナル抗体の抗原認識部位の同定を試みているが、ほぼ同じ領域(約100aa)にあり、差異を確定できておらず、ELISA法の確立に至っていない。ウシプロカルシトニンについては大腸菌による蛋白発現に成功し、モノクローナル抗体の作出を行っているが、まだ2クローンしか確立されておらず、再度作出を試みる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
ウシAGPについては、サンドイッチELISA法が困難な場合、Biacoreを用いた表面プラズモン共鳴法による血中濃度測定および競合ELISA法の確立を試み、臨床応用へと展開する。場合によっては単純放射状免疫拡散法も試みる。ウシプロカルシトニンについては、再度モノクローナル抗体の作出を試みるが、抗原については合成ペプチドを利用することも検討し、サンドイッチELISA確立を試み、臨床応用へと展開し、血中変動の意義を探求する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ウシプロカルシトニンに対するモノクローナル抗体作成に時間を要したことと十分なクローン数が得られなかったこと、またウシα1酸性糖蛋白のモノクローナル抗体の抗原決定基の違いを確定できなかったことから、この部分の研究計画とくにELISA法の確立に遅れが生じたため、該当研究経費を次年度に使用する予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度はモノクローナル抗体の作出にアジュバント効果の高い試薬を利用して実施し、ビアコアによる定量法の確立を試みるための経費に充てる予定である。
|