研究実績の概要 |
難治性病態における急性期蛋白変動の疾患特性と糖鎖変調の解明を目的として、最終年度は肺炎様症状を呈するウシ症例のプロカルシトニン(Pct)濃度の測定、ハプトグロビン(Hpt)濃度の測定、およびPctモノクローナル抗体(Mab)の認識配列について検討した。ウシPct濃度は、正常牛では検出限界以下であったが、ウシ肺炎症例では34.4±84.4 pg/ml。また、発熱継続群では寛解群に比較して有意な高値を示した。一方、Hptは正常牛群では2.68±0.40 μg/mlであったのに対し、症例群では405.5±482.4 μg/mlと正常牛と比較して有意な高値を示した。しかしながら、発熱継続群と寛解群に有意な差はみられなかった。加えて、Pct値とHpt値は相関せず、病態の違いを示すものと考えられた。これまで得られたPct Mabは5種類あり、1種はN末端領域,26-96aaを認識し、この領域のエピトープ候補は、69-81aaと予想された。一方、4種はC末端領域、87-143aaを認識し、予測される2つのエピトープ、112-125aa、131-143aaが含まれていた。研究期間全体では、基礎的事項としてマウスα1酸性糖蛋白(AGP)に対するMabの作製とAGP定性法・ELISA定量法を確立し、炎症モデルマウスでは糖鎖構造の異なるAGPの出現することやN104位に付加される糖鎖には、分子の細胞外放出を促進する働きがあることが示唆された。応用的事項として、ウシAGP MAbを作製し、これは主に成熟AGPのC末端側、168-202aa及び立体構造を認識しており、直接ELISA法による定量が可能となった。また、ウシPct MAbを作製し、サンドウィッチELISAによる定量系を確立するとともに、肺炎症例のPct濃度、Hpt濃度の測定を実施し、急性期蛋白変動の意義を解明する上で有用な知見が得られた。
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