研究課題
前年までに、細胞質内で遺伝子を発現して染色体を傷つけないより安全なベクターとされているセンダイウイルスベクター(SeVdp)を用い、イヌとネコのiPS様細胞コロニーを得ることに成功し長期継代が可能であったが、SeVdpの除去ができなかった。そのため、本年度はネコではsiRNAを用いたSeVdp除去条件の検討、イヌでは自然に除去される仕組みをもった違うタイプのSeVdpによるiPS細胞作製を試みた。その結果、以下のような結果が出ている。①ネコ胎子線維芽細胞にSeVdpを用いて、多能性関連遺伝子であるヒトOCT3/4、SOX2、KLF4およびc-MYCの4因子を導入後、TGFβ阻害剤であるSB431542、あるいはA83-01をそれぞれ培地中に添加し、初代コロニーの形成効率を比較したところ、無処置群と比較して有意に改善した。しかし、得られた細胞は免疫染色でOCT3/4陽性を示したが、AP染色陰性であり十分未分化性を維持できなかった。②ネコ胎子線維芽細胞にSeVdpを用いて、上記4因子とヒトNANOGおよびLIN28 を加えた6因子を導入後、A83-01、EGF、およびForskolin(FSK)を培地中に添加した。初代コロニーの形成効率は6因子に添加因子を加えると上昇し、6因子+A83+EGF+FSKで最も高かった。すべてのコロニーはAP染色陽性であり、免疫染色ではOCT3/4、TRA1-60に陽性を示した。さらにSeVdp除去後の細胞は長期継代が可能であり、OCT3/4に陽性を示した。③イヌ胎子線維芽細胞に自然に除去される仕組みをもったSeVdpを用いて遺伝子導入することで、ヒトiPS細胞の類似した細胞コロニーが得られた。この細胞は、長期継代が可能であり、さらに継代を経ることで自然にSeVdpが除去されることが確認された。現在、この細胞株の性状を解析中である。
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