研究課題
本年度は、前年度に成功したコムギ胚芽無細胞蛋白質合成技術を利用して、遺伝子組換え生物を用いずに遺伝子組換えイヌ線維芽細胞増殖因子(rc-bFGF)の合成および精製を行った。次いで、未分化群、遺伝子組換えヒトbFGF(rh-bFGF)群、rc-bFGF群、対照群の4群に分けて、犬の骨髄間質細胞を10日間培養した。培養10日目に50mM KClまたは100μM L-glutamateで刺激し、Fluo3-AMを用いたCa2+イメージング法にて電気生理学的機能を評価した。犬の骨髄間質細胞は、rh-bFGFまたはrc-bFGFで刺激した場合において、ニューロン様の形態へと変化した。各群における培養10日目の細胞を50mM KClにて脱分極刺激したところ、rc-bFGF群とrh-bFGF群において他群に比べて有意な細胞内Ca2+濃度の上昇が認められた。さらに、神経伝達物質であるL-glutamate にて同様に刺激したところ、rc-bFGF群とrh-bFGF群において他群に比べて有意な細胞内Ca2+濃度の上昇が認められた。その際の細胞内Ca2+濃度の上昇は、rh-bFGF群よりもrc-bFGF群の方が有意に高かった。本研究では、無細胞蛋白質合成技術を利用して合成および精製したrc-bFGFを用いて犬の骨髄間質細胞を刺激したところ、過去に検討を行ったrh-bFGFで刺激した時と同様に、ニューロン様の形態へと変化し、ニューロンに関するmRNAの発現が認められた。さらに、本研究で使用したrc-bFGFは、犬の骨髄間質細胞を脱分極刺激およびL-glutamate刺激に反応するニューロン様細胞へと分化させる作用を有していることが明らかになった。これらの結果から、本研究で合成および精製したrc-bFGFは犬の神経再生医療へ応用できる可能性が示唆された。
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BIO Clinica
巻: 32 ページ: 97-102